2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J02059
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田 世民 京都大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 浅見絅斎 / 文公家礼 / 喪祭小記 / 家礼師説 / 喪祭礼 / 火葬 / 排仏 / 朱子学的死生観 |
Research Abstract |
修士論文「近世における『文公家礼』に関する実践的言説-崎門派の場合-」の研究成果を受けて、言説を中心に分析した修論に対し、浅見絅斎の『家礼』実践の実相に迫る作業を行った。具体的には、絅斎の『家礼』に関する著述を「家礼」書の注釈よりも、彼の思想実践の一環として捉え、そして彼が身をもって『家礼』を実践した様相を明らかにした。 まず、「通祭記」「喪祭記」からなる絅斎の書『喪祭小記』について分析し、そしてそれは絅斎が『家礼』にもとづいて著した通礼・喪祭礼の手引書であり、人々に実際にそれを実践させようとした書であった、ということを見出した。次に、絅斎の語録類とその喪祭礼講義録『家礼師説』をもとに、彼が喪祭礼を実践したありさまを明確にした。そして、喪祭礼式をめぐる絅斎の礼俗観を考察し、喪祭礼と日本の風俗習慣との調和を図る彼の努力、および火葬などの仏葬を批判した彼の排仏立場を明らかにした。また、『小記』の社会的展開を見るために、崎門門流とみられる者が著した2つの喪祭礼書を取り上げ、それらが絅斎『小記』の成果に負うことが多かったと考察した。そして最後に、絅斎の『家礼』実践の思想史的意味を指摘しておいた。つまり、絅斎は儒家の喪祭儀礼に具現された朱子学的死生観を忠実に守ろうとした。その地点に立って、神主や棺槨や墳墓の一つひとつにいたるまで、安易な妥協を排し、ことさら真剣に捉えて、具体的な礼式づくりに奮闘していた。絅斎においては、それらの努力は目に見える形での朱子学的死生観の実践であると同時に、「人倫日用」にかかわる切実な問題に応えた思想的営為である。言い換えれば、それはまさに朱子学の思想を生きようとした生き方であり、朱子学の死生観レベルでの実践にほかならない。
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Research Products
(2 results)