2006 Fiscal Year Annual Research Report
17世紀中頃から18世紀初頭のナポリ王国における経済学成立過程および啓蒙思想
Project/Area Number |
05J02074
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉岡 亮 京都大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ナポリ王国 / 17世紀 / Giuseppe Valletta / Juan de Mariana |
Research Abstract |
本年度は以下の三点にわたり研究を実施した。第一に,ナポリ王国の社会問題に関する先行研究を調査し,17世紀初頭から貨幣の変造・偽造・削り取りなどによって徐々に為替システムが混乱をきたしはじめ,1620年前後には相次いで銀行が破綻するなど,当時のナポリ王国においては社会経済の大混乱が非常に大きな問題となっていたということを明らかにした。またそのような社会経済状況に対して,当時の為政者や知識人がどのように対処したのかを明らかとした。その後このような社会経済の混乱状況は徐々に沈静化したものの,17世紀後半でもなお貨幣システム,為替システムはしばしば混乱をきたしたということも明らかとなった。第二に,昨年度の研究結果をふまえてジュゼッペ・ヴァレッタ(Giuseppe Valletta)の貨幣に関する草稿を分析した。それがどのようなコンテクストで,どのような問題認識のもとに,何を意図して書かれたのかということを明らかにした。つまり17世紀初頭から続く貨幣システムの混乱の中で,君主(支配者)による貨幣の恣意的改変を否定し,鋳造作業に市民の代表者を参加させることで,貨幣に信用を取り戻すべきだというのがヴァレッタの主張の骨子であった。第三に,当該草稿の分析によってヴァレッタの思想的源泉を明らかにした。従来はあまり着目されていなかったが,16-17世紀のスペイン人ファン・デ・マリアーナ(Juan de Mariana)の影響がとりわけ強かったものと考えられる。草稿中,ヴァレッタはマリアーナの著作『貨幣改鋳論』の一節を引用しているし,両者の主張は君主の恣意的貨幣改鋳を否定するという点で一致していることを明らかにした。
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Research Products
(1 results)