2007 Fiscal Year Annual Research Report
17世紀中頃から18世紀初頭のナポリ王国における経済学成立過程および啓蒙思想
Project/Area Number |
05J02074
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉岡 亮 Kyoto University, 経済学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ナポリ王国 / 17世紀 / Giuseppe Valletta / Juan de Mariana / Diego Saavedra Fajardo / Medinaceli |
Research Abstract |
17世紀ナポリを代表する思想家であるジュゼッペ・ヴァレッタに焦点を当て,当時の社会経済状況を踏まえた上でその思想の全容を明らかにすることが本研究の目的である。本年度は以下の二点にわたり研究を実施した。第一に,ヴァレッタの貨幣論の中に表された国家論および統治論の基本的概要は、国王といえども、臣民およびその具体的政治機関としての都市の利益を損なう政策を、臣民及び都市の同意なくして導入することはできないというものであることを明らかとした。さらにそのようなヴァレッタの基本的思想に、暴君放伐論で有名なスペインの思想家ファン・デ・マリアーナや,カトリック君主論を展開したディエゴ・ディ・サアヴェドラ・ファハルドが大きな影響を与えていることが明らかとなった。第二に、近年イタリア本国において本研究に重要な資料集が刊行されたことをうけて、17世紀末にナポリ副王メディナチェリの主催で開催されたメディナチェリ・アカデミーにおけるヴァレッタの講義を分析した。講義は全部で四回行われているが、本年度は『高貴さの源泉について』、『ペルシア帝国について』の二つについて分析を行った。『高貴さの源泉について』の分析によって、高貴さというのは血統や家柄によって先天的に得られるものではなく、人間の教育や勤勉によって得られるものであるというヴァレッタの見解が明らかとなった。『ペルシア帝国について』の主な内容は、ペルシア帝国の領土の広大さ、ペルシア人の特徴的な風俗、ペルシア皇帝がいかに帝国を維持してきたのかという点に対するヴァレッタの見解が明らかとなった。
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