2006 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト-ブタの関係性からみる人間の家畜への態度とその位置付け
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05J02089
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
比嘉 夏子 京都大学, 大学院人間・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 贈与交換 / 豚 / トンガ王国 / ポリネシア |
Research Abstract |
本年度前期は、昨年度末のトンガ王国におけるフィールドワークで得られたデータ、資料を分析し、そのとりまとめと成果の発表をおこなった。ここでは年末年始にキリスト教会で実施された行事とそれにともなう饗宴、豚をはじめとする食物贈与がいかに実施されたのか、そのデータをもとに、この地においてめまぐるしく繰り広げられる宗教的贈与を検討し、その成果は6月の日本文化人類学会研究大会において「『神への贈与』再考-トンガ王国における教会への献金と献身を手がかりとして-」というタイトルで発表した。その後2006年10月から2007年2月まで再びトンガを訪れ、約5ヶ月間にわたる継続的なフィールドワークを行った。この調査によって、豚をはじめとする伝統材の贈与交換について、共同体、教会、王権社会といった多様な角度からとらえるためのデータが収集された。特に、同年の前国王の崩御にともなう国家規模の儀礼について村レベルでの綿密な聞き取り調査を行ったこと、滞在中に発生した民主化運動に端をなす首都暴動について情報収集したことなどは、ヒト、豚の関係をみる、という基本調査にとどまらず、モダニティの波が急速に押しよせる現代トンガ社会を考察するうえで特に重要な成果となった。この首都暴動と民衆の反応については、帰国後3月の日本オセアニア学会研究大会のフォーラム「現代オセアニアにおける政治的混乱と都市暴動」において「トンガにおける民主化運動と暴動の背景」というタイトルで発表し、政治家、知識人ではない民衆にとっての民主化と改革がどのような意味をもつのか、調査地からのミクロな視点を提示した。これらの18年度の調査で得られたさまざまな研究成果は19年度中に相次いで論文として発表する予定である。
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