2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J02103
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村上 咲 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | インドネシア / 保健政策 / 専門家 / 近代国家形成 / 植民地 / 20世紀 |
Research Abstract |
1.インドネシアの国民国家形成と保健の関係を考察する上で不可欠な文献サーベイを年度前半に集中的に行なった。先進国諸国の保健制度導入について各国の国家-社会関係の比較からそれぞれの地域において国家について期待される役割や介入の度合いが分析されるものが見られるのに対し、植民地を扱った研究や現在の発展途上国の保健を巡る研究において国家とはなにか、という視点は欠如しているという知見を得た。そこで展開されるのは権力-社会の構造に関する議論であり、それぞれの社会に立脚した国家のあり方ではない。植民地という近代国家のひとつの要件となった国民主権が果たされない状況と国民国家であることがある種自明の論理となった20世紀後半における状況であるためと考えられる。しかし、90年代以降国家の位置が相対化されているなかで、保健制度と国家の関係は再考される必要がある。 2.インドネシアの保健政策に関するデータ整理・分析では、政策と予算状況から、70年代以後国家による予算の自由度が格段に改善し、そこではじめて長らく机上の空論であった活動が軌道に乗ったことがわかる。しかし、実際の保健パフォーマンスとの関連性や国家の社会からの自立性に関してはさらなる分析を要するため、現時点での発表は見送り、人的資源の制約をめぐる50年代の議論とそこから国家にどのような保健政策が求められるようになったのかについて来年度4月に国際シンポジウムで発表を行なう。 3.11月から2月には時間の関係上オランダに絞って資料収集を行なった。植民地本国で政策が決定される中で新しく成長する専門家集団がいかに科学性と国際ネットワークを利用してロビーイングを行なったか、しかし実際に使用できる金銭的・人的資源での複雑な関係が存在したかについて知見を得ている。この点について来年度論文投稿を予定している。
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