2007 Fiscal Year Annual Research Report
液体分子線標的のイオンビーム照射における二次粒子生成過程の研究
Project/Area Number |
05J02161
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
金田 実 Kyoto University, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 液体分子線 / イオンビーム / 二次イオン / 質量分析 / 阻止能 / 液体分子線 |
Research Abstract |
今年度はこれまで積み重ねてきた実験技術を基に、より身近でかつ生物学的にも工学的にも重要な液体純水標的及び塩化ナトリウム水溶液標的を対象として実験・研究を行った。純水標的からは二次負イオンとして水分子クラスターからプロトンが1つ脱離した(H20)nOH-イオン(n=0〜40程度)が主に生成されることが分かった。またこれらの強いpeakに付随して、プロトン脱離クラスターからさらに多くの水素原子が脱離した[(H20)n-Hm]-イオン(n≧1,1≦m≦4)が収量は少ないながらも生成されることが分かった。この傾向は15Kwater ice標的からの二次イオン放出と一致しているが、クラスターサイズnに対する収量変化が大きく異なっており、液体内部及び固体内部のクラスター構造の違いを反映していると考えられる。またこれらのイオンは液体内部の水分子クラスターに数eV程度のエネルギーを持った電子が付着したのち解離する過程を経て生成されていると考えられる。 塩化ナトリウム水溶液標的からは二次負イオンとして(H20)m(NaCl)nR-(RはOHまたはCl)と表されるイオンが主に生成されることが分かった。また各イオン収量の濃度依存性はNaCl水溶液の対相関関数で定性的によく説明できること、5M程度の高濃度領域では報告されている平衡定数から予測される液体内部のクラスター分布とかなりの程度一致することが分かった。この結果は生成される二次イオンは液体内部構造に強く依存することを意味し、即ちこれまで研究・開発に取り組んできた新実験手法が水溶液標的と高速イオンの衝突相互作用を調べる強力なツールであることを裏付ける結果と言える。 また、液体標的の阻止能測定を昨年度に引き続き行った。今年度は特に測定精度の向上と解析手法の改善に重きを置き、液体標的厚さをレーザ回折法により求めることでこれまで連立で求めていた標的厚さと阻止断面積を独立に測定出来るシステムを構築した。
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Research Products
(1 results)