2005 Fiscal Year Annual Research Report
到達把持運動制御に関する計算理論およびニューラルネットワークモデル
Project/Area Number |
05J02177
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
竹村 尚大 京都大学, 情報学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 到達把持運動 / 計算論モデル / 視覚と運動 / 運動時間と運動精度 |
Research Abstract |
本年度は、まず、これまでに提案したモデルの妥当性を検証するために、到達把持運動における運動時間と指間距離最大値の関係を調べた実験のモデルによるシミュレーションを行った。Fukui and Inui(投稿中)の実験では、通常の半分の運動時間の到達把持運動では指間距離最大値が通常の運動より大きくなり、加えて、先行知見と同様に運動初期における視覚情報の除去で指間距離最大値が大きくなる現象が示された。本研究で提案しているモデルにおいて運動時間を通常の半分としたシミュレーションでは、実験と同様に指間距離最大値が増加することを再現することができた。この結果は、モデルに運動精度の制約を与えたためだと考えられる。また、通常の運動時間と半分の運動時間のどちらでも運動初期の視覚情報が指間距離最大値に影響を持つことから、運動初期視覚の重要性が単にヒトの生体およびモデルに内在する感覚運動遅延によるものでなく、運動終点における精度を保証するためにオンラインで運動を修正するメカニズムが大きな役割を果たしている可能性が示唆された。 さらに、統計的制御理論を用いて到達把持運動制御の基盤となるメカニズムを記述しようと試みた。具体的には、指の制御成分と腕の制御成分がどのように協調するかについて、運動結果の精度を予測し、予測精度を最大化するようにそれぞれの制御成分がその出力を互いに調整し合うようなメカニズムを考案した。このとき、精度と出力のバランスが定常であると仮定したシミュレーションでは、把持の精度が必要な運動の後半で腕の速度が遅くなり、かつ指間距離が最大となるヒトの到達把持運動の特性を再現することはできず、精度制約と運動出力のバランスを運動中に変化させる機能が必要だと思われる。
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