2005 Fiscal Year Annual Research Report
動力学的震源モデルを用いた短周期地震動(耐震設計地震動)の高精度再現手法の開発
Project/Area Number |
05J02187
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
後藤 浩之 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 動力学震源インバージョン / マルチスケールインバージョン / 動力学震源モデル / 震源のモデル化 / シナリオ型耐震設計 |
Research Abstract |
本年度は,提案する動力学震源インバージョン手法に関して推定変数を組み替えることで,非線形最適化問題として定義されている評価関数の不連続性を除去し,連続な評価関数とした.評価関数が連続となることにより微分を評価することができるため,共役勾配法のような評価関数の微分値に基づいた最適化手法を利用することにより,手法の高速化を図ることが可能となった.また,定式化されたインバージョン手法は連続でありながらも強い非線形性を有するため,Walsh関数に基づいたマルチスケールインバージョン手法を開発して本手法に導入した.Walsh級数展開は離散値関数を緩やかに変化する項から短い距離で変化する項までを分離することができるため,緩やかな項のみからなる空間分布を高次の項を無視したWalsh級数展開で近似することで自然に定義することが可能である.マルチスケールインバージョンは,空間の緩やかな変動成分から徐々に細かな変動を推定する手法であり,Walsh級数展開で低次の項の係数から順に推定することに対応する. しかし,動力学震源モデルに関する既往の研究によると,破壊モデルを構成する独立なパラメタが異なる2つのモデルに対して,計算された波形が似たものになる場合があることが示されていた.これは開発した動力学震源インバージョン手法の推定変数間にトレードオフの関係を示唆するため,インバージョンを実施することで破壊時刻が他の変数とトレードオフの関係にあることを確認した.これにより,初期値として与えた破壊時刻に解が依存するため,地表波形のみを用いて震源インバージョンを行う限り破壊時刻に関する何らかの規範を与える必要があることを解明した.また,破壊時刻が何らかの規範により仮定された場合,ノイズや観測点の変化に対して安定して解が推定されることを示した.
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