2005 Fiscal Year Annual Research Report
アルミニウムの潜在的特性の発現を指向した不斉触媒の設計と炭素骨格変換反応の開発
Project/Area Number |
05J02210
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大松 亨介 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | アルミニウムルイス酸 / 触媒的不斉合成 / 転位反応 |
Research Abstract |
アルミニウム化合物は、高いルイス酸性と親酸素性を持ち、数多くの含酸素官能基変換反応の触媒として機能する合成化学的価値の高い化合物である。同時に、安価で扱いやすく、無害であるといった工業的利点も併せ持つ。これまでにアルミニウムルイス酸に関する研究が精力的に進められ、多くの有用な反応剤が開発されてきた。しかし、アルミニウム本来の特性を完全に引き出すには至っておらず、それ故にアルミニウム触媒の持つ潜在的反応性は未知であり、それを活かした選択的官能基変換反応の開拓もまたほとんど手つかずの状態にある。このような背景のもと、今年度は以下のような研究に従事した。 ピナコール転位をはじめとするアルキル基の1,2-転位は、骨格形成法として極めて特徴的であり、高い合成化学的価値を有している。しかし、長年、反応を効率的に進行させるための適した駆動力が発見されなかったこともあり、今日までに骨格転位反応が選択的精密有機合成へと応用された例は稀である。私は、独自のアプローチに基づき、アルミニウムルイス酸による活性化を起点とする全く新しい触媒的不斉1,2-転位反応の開発を試みた。具体的には、α-位に二つの置換基を有するα-シロキシアルデヒドを基質とし、触媒量の高活性アルミニウムルイス酸を作用させることで、α-位の置換基の1,2-移動が円滑に進行することを見出した。さらに反応によって生じる不斉炭素の立体化学を効果的に制御するために、新規軸不斉配位子をデザインし、それを用いて調製したアルミニウム触媒により高収率、高エナンチオ選択的な触媒的不斉1,2-転位反応を開発することに成功した。本反応は、従来法では合成困難な構造を持つ光学活性α-ヒドロキシケトンを効率的に提供し得るものであり、同時に、プロキラルな基質に新たに不斉を導入するエナンチオ選択的な触媒的1,2-転位反応の成功例として他に類を見ない。
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