2005 Fiscal Year Annual Research Report
細胞内薬物送達の制御を目指した新規構造スイッチング型膜透過ペプチドの設計と開発
Project/Area Number |
05J02256
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
武内 敏秀 京都大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 塩基性ペプチド / アルギニン / 対アニオン / 膜透過ペプチド / エンドサイトーシス |
Research Abstract |
塩基性アミノ酸を多く含むペプチド(塩基性ペプチド)は、高い親水性を有するにもかかわらず、細胞内に容易に移行することが知られており、この性質を利用した薬物の細胞内デリバリー、特に細胞内に移行しにくい水溶性薬物への応用が期待されている。しかしこの塩基性ペプチドを薬物キャリア分子として考えた場合、高い細胞内移行能を自由に制御する技術が将来的に必要となる。本研究では前段階としてすでに明らかにしている塩基性ペプチドの細胞内移行における構造依存性に関する知見をもとに、その細胞内移行能を構造変化によって自由に制御できる塩基性ペプチドをデザインし、合成を行う。 今年度は、平成17年度の研究計画に従い、光照射やpH変化によって特異的に構造変化を起こし、細胞内移行能を獲得する塩基性ペプチドの設計および合成を行ってきた。具体的には光照射によって切断されるリンカーとしてニトロベンジル基を含むもの、あるいはpHの低下(pH5付近)により分子内で分解が起こるリンカーを組み込んだものを合成した。しかしながら両者とも非常に不安定であり合成が困難であることから、安定で簡単に合成できるものを目指し現在他の光感受性リンカーに関して検討を行っている。これと平行して、より実際的なターゲットであるリソソーム酵素の切断配列を組み込んだ塩基性ペプチドに関し、検討を行っている。 これと同時に、上記の塩基性ペプチドの細胞内移行を追う過程で得られた塩基性ペプチドの細胞内トラフィックに関する知見をBioconjugate Chemistry誌に発表を行った。また同様に、偶然にも負電荷を有する疎水性の分子(対アニオン)を共存させることにより、塩基性ペプチドがわずか数分で直接細胞質に移行することを見出した。塩基性ペプチドは通常、エンドサイトーシスによって細胞内に移行し、そのほとんどがエンドソーム小胞内にとどまることが知られているが、薬物キャリア分子として考えた場合、小胞からの脱出(細胞質への移行)という点が課題であった。今回見出した手法は、塩基性ペプチドの細胞内移行経路を劇的に変化させるものであり、今まで困難とされていた細胞質への直接的な物質導入を可能とするものである。この発見に関しては、ペプチド討論会や日本薬学会など様々な学会で精力的に口頭発表を行うとともに、現在論文を投稿中である。
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Research Products
(2 results)