2006 Fiscal Year Annual Research Report
細胞内薬物送達の制御を目指した新規構造スイッチング型膜透過ペプチドの設計と開発
Project/Area Number |
05J02256
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
武内 敏秀 京都大学, 化学研究所, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 塩基性ペプチド / アルギニン / 対アニオン / 膜透過ペプチド / エンドサイトーシス |
Research Abstract |
アルギェンやリジン残基を多く含むペプチド(塩基性ペプチド)が細胞内に容易に移行することが見出され、この性質を利用したin vitroやin vivoでのドラッグデリバリーが盛んに研究されている。しかし現段階においてこの塩基性ペプチドの細胞内移行は非特異的であり、薬物キャリア分子として将来への応用を考えた場合、高い細胞内移行能を自由に制御する技術が必ず必要となる。研究代表者らは塩基性ペプチドの細胞内移行能がその構造によって大きく変化することを見出していることから、本研究では構造を変化させることで自由に細胞内移行が制御できる塩基性ペブチドをデザインし、合成を行う。 今年度は、疾病特異的に細胞外に検出されるプロテアーゼの切断配列を組み込んだ塩基性ペプチドの設計および合成を行ってきた。具体的には前立腺特異抗原(PSA、前立腺がん)、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP、がん)やカテプシン(炎症部位)によって特異的に切断される配列を組み込んだ塩基性ペプチドを合成した。またこれらの塩基性ペプチドが酵素処理により構造を変化させることを確認した。現在、これらのペプチドの細胞内移行が酵素の有無により制御可能であるかについて主にHeLa細胞を用いて検討を行っている。またPSAを培養液中に分泌する前立腺がん由来細胞株(DU145)を用い、前立腺がんへのターゲティングを目指し検討を行う予定である。 これと同時に、上記の塩基性ペプチドの細胞内移行を追う過程で得られた知見をBiochemistry誌などに発表を行った。また、偶然にも負電荷を有する疎水性の分子(対アニオン)を共存させることにより、塩基性ペプチドがわずか数分で直接細胞質に移行することを見出した。この現象は、これまでの塩基性ペプチドの細胞内移行とは全く異なるものであり、今まで困難とされていた細胞質への直接的な物質導入の可能性を強く示すものである。この発見に関しては、国内外の様々な学会で精力的に口頭発表を行うとともに、ACS Chemical Biology誌に発表した。また、塩基性ペプチドの細胞内移行に重要なアルギニン側鎖(グアニジド基)に注目し、これをイノシトールの水酸基に導入した全く新たな細胞内デリバリーベクターについても検討を行い、Aneewandte Chemie International Edition誌に発表した。
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Research Products
(7 results)