2007 Fiscal Year Annual Research Report
細胞内薬物送達の制御を目指した新規構造スイッチング型膜透過ペプチドの設計と開発
Project/Area Number |
05J02256
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
武内 敏秀 Kyoto University, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 塩基性ペプチド / アルギニン / 直接膜透過 / 濃度閾値 / エンドサイトーシス |
Research Abstract |
アルギニンやリジン残基を多く含むペプチド(塩基性ペプチド)が細胞内に容易に移行することが見出され、この性質を利用したin vitroやin vivoでのドラッグデリバリーが盛んに研究されている。しかし現段階において、この塩基性ペプチドの細胞内移行は細胞選択性がなく(非特異的)、薬物キャリア分子としての将来への応用を考えた場合、高い細胞内移行能を部位特異的に自由に制御する技術が必ず必要となる。研究代表者らは塩基性ペプチドの細胞内移行能がその構造によって大きく変化することを見出していることから、本研究では構造を変化させることで自由に細胞内移行が制御できる塩基性ペプチドをデザインし、合成を行った。 これまで、光照射やpH変化によって特異的に構造変化を起こし、細胞内移行能を獲得する塩基性ペプチドの設計および合成を行ってきた。具体的には光照射によって切断されるリンカーとしてニトロベンジル基を含むもの、あるいはpHの低下(pH5付近)により分子内で自己分解が起こるリンカーを組み込んだものを合成した。しかしながらこれらは非常に不安定であり合成が困難であることから、安定で簡単に合成できるものを目指し現在他の光感受性リンカーに関して引き続き検討を行っている。また、より実際的なターゲットとして、疾病特異的に細胞外で検出されるプロテアーゼに注目し、これらによって特異的に切断される配列を組み込んだ塩基性ペプチドを合成した。疾病特異的なプロテアーゼとして、前立腺特異抗原(PSA、前立腺がん)やマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP、がん)、カテプシン(炎症部位)を取り上げ、これらの塩基性ペプチドが酵素処理により構造を変化させることを確認した。現在、これらのペプチドの細胞内移行が酵素の有無により制御可能であるかについて主にHeLa細胞を用いて検討を行っている。またPSAを培養液中に分泌する前立腺がん由来細胞株(DU145)を用い、前立腺がんへのターゲティングを目指し検討を行っている。 これと同時に、塩基性ペプチドの細胞内移行において、濃度依存的にサイトゾルに直接移行する経路が存在することを見出した。通常塩基性ペプチドは、エンドサイトーシスによって細胞内に取り込まれることが知られているが、投与濃度が閾値を超えるとエンドサイトーシスだけでなく、サイトゾルへと直接移行することを見出した。この現象は、これまでの塩基性ペプチドの細胞内移行とは全く異なるものであり、今まで困難とされていた細胞質への直接的な物質導入の可能性を強く示すものである。この発見に関しては、学会発表を行うとともに、Bioconjugate Chemistry誌に発表した。また、塩基性ペプチドの細胞内移行に重要なアルギニン側鎖(グアニジド基)に注目し、これをソルビトールの水酸基に導入した新たな細胞内デリバリーベクターについても検討を行い、これがミトコンドリアに効率よく集積することなどを見出し、Angewandte Chemie International Edition誌に発表した。
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Research Products
(11 results)