2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J02263
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
東樹 宏和 九州大学, 理学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 共進化 / 軍拡競走 / 地理的モザイク |
Research Abstract |
今年度は、昨年度までに行ったツバキシギゾウムシとヤブツバキの間の共進化に関する研究を別の研究対象へと拡げるため、日本各地でツバキシギゾウムシの近縁種であるクリシギゾウムシとその寄主植物(クリ・ミズナラなど)の果実を採集した。そうしたところ、ツバキシギゾウムシとヤブツバキの系でみられたように、捕食者側の攻撃形質(クリシギゾウムシ口吻長)と被食者側の防衛形質(クリのイガの長さと密度)に地理的な変異が存在していることが明らかになった。この結果は、クリシギゾウムシとその寄主植物の間で起こっていると考えられる「軍拡競走」の進行度合いが、局所的な群集によって違っていることを示唆している。 しかし、ツバキシギゾウムシとヤブツバキの系で観察された過程とは一致しない傾向も観察された。すなわち、クリシギゾウムシの口吻長が長い個体群で、必ずしもクリのイガが長いわけではなかった。現在、この点を説明するいくつかの対立仮説を検証する室内実験を行うため、クリシギゾウムシの幼虫をインキュベーター内で飼育している。同種の飼育に関しては、技術が確立しており、実際に飼育中のもののうちで蛹化する個体も出現し始めている。 なお、今年度は、昨年度までに得られたデータの論文化にも力を入れた。そのうち、3報が国際誌に掲載され、1報が解説論文として和文誌に掲載された。なお、執筆中および投稿中の論文がまだ数編あり、現在、投稿・受理に向けて執筆を継続中である。また、和文の教科書への分担執筆を依頼されたため、その作業に一ヶ月ほどを費やした。
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Research Products
(4 results)