2007 Fiscal Year Annual Research Report
霊長類にみられる昆虫食行動の採食生態学および文化生態学的側面からのアプローチ
Project/Area Number |
05J02270
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
清野 未恵子 Kyoto University, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 霊長類の昆虫食 / 行動の地域差 / 野生チンパンジー / マハレ山塊国立公園 / アリ / タンザニア / 被・捕食関係 |
Research Abstract |
霊長類の昆虫食行動には地域差があることが知られており、なかでもチンパンジーのアリ採食行動の地域差は、環境要因だけでは容易に説明ができない文化的行動として扱われている。だが、これまでのチンパンジーのアリ採食行動の研究は、道具を使用する場合しか着目されておらず、アリの生態的な調査はほとんどなされてこなかった。そこで本研究では、タンザニアのマハレ山塊国立公園生息する野生チンパンジーを対象に、道具を使用する・しないといった行動のバリエーションがどのようなアリの生態に対応して生じているものなのかを明らかにすることで、アリとチンパンジーの相互作用を多角的な視野から捉えることを目的とした。そこで、タンザニア・マハレ山塊国立公園にて、チンパンジーの採食行動の観察と平行してその地域に生息するアリの分布・営巣状態などの生態調査を行った。 食べられているアリの種類は樹の幹や枯れ枝に生息するアリで、幹に生息するアリの場合は道具を使用するが、枯れ枝に生息するアリの場合は道具を使用せずに採食していることがわかった。道具を使用する場合とそうでない場合では利用される樹種が異なっており、枯れ枝内のアリ採食は幹に生息するアリ採食とは異なる文脈で生じていることがわかった。また大木の幹は固定されているが、枯れ枝は折って持ち運びが可能であるにも関わらず、複数個体が集まっている状況で生じることが多く、ある個体が枯れ枝のアリを採食し始めると他個体も同調するような、協調的採食行動であった。枯れ枝内のアリの生態に応じた採食行動は、道具を伴う採食行動とは異なるアリの生態に対する認識を必要とし、それは複数個体で共有される性質をもっている可能性がある。道具を使用するアリ採食行動と枯れ枝内アリ採食行動はそれぞれアリの生態と関わって独立に形成された相互作用であり、チンパンジー同士の相互作用もそれに応じて異なる側面をもつと考えられる。
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Research Products
(5 results)