2006 Fiscal Year Annual Research Report
脂質ラフトを介した毒性型アミロイドβ蛋白質の形成条件探索と単離
Project/Area Number |
05J02295
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岡田 琢磨 京都大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | アルツハイマー病 / アミロイドβ蛋白質 / ガングリオシド |
Research Abstract |
今回特別研究員は、アルツハイマー病(AD)患者脳脊髄液で健常者より高濃度で検出され、神経細胞膜成分である糖脂質ガングリオシドGM1(GM1)を介して、AD発症に関わる毒性型アミロイドβ蛋白質(Aβ)が形成される可能性を考え、毒性型Aβの単離・同定を目指して検討を行った。 GM1存在下および非存在下において、Aβ-(1-40)の円二色性スペクトル(CD)を測定した。GM1非存在下ランダム構造を示すAβ-(1-40)は、GM1存在下GM1濃度の増加に依存してαヘリックスに富んだ構造を示した。それぞれのCDスペクトルが200nm付近の等吸収点を示すことから、GM1存在下Aβ-(1-40)はランダム構造とαヘリックス構造の二状態平衡にあることが分かった。 次に、GM1存在下および非存在下、Aβ-(1-40)をPBS中(pH7.4,37℃)でインキュベートし、CD、チオフラビンT蛍光(Th-T)、サイズ排除クロマトグラフィー、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて二次構造変化および凝集を評価した。GM1非存在下24時間では、Aβ-(1-40)は、単量体・ランダム構造を保持し、凝集体形成を示さなかった。しかし、等モルGM1存在下、Aβ-(1-40)は、6-12時間のラグタイムの後、βシート構造に富んだ、Th-T蛍光上昇を示す凝集体を形成した。また、GM1が低濃度の場合、凝集体形成は著しく緩やかに進み、凝集体形成はGM1濃度に大きく依存していることが示唆された。 次に、NGFにより神経様に分化させたPC12細胞を用いて、各凝集段階でのAβ-(1-40)の神経細胞毒性をLive/Dead assayにより評価した。その後、毒性を示した条件にて、遠心分離により毒性体の単離を試みた。その結果、Aβ-(1-40)の毒性は凝集体形成に依存して発現され、遠心分離により、沈殿両分にて毒性体が確認された。TEMによる観察から、沈殿画分に存在する毒性の本体は、アミロイド線維であることがわかった。このアミロイド線維は、GM1非存在下凝集核を添加して形成したアミロイド線維と比較して、より強力な毒性を示し、形態的な相違が観察されたことから、Aβ-(1-40)アミロイドにはpolymorphismが存在することが明らかとなった。
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