Research Abstract |
ホルムアルデヒドを曝露したマウス血液において,マウスグロビンβ鎖N末端がメチル化したタンパク質を,特異的に認識する抗体を用いたところ,特異的なバンドの検出を確認した。このことから,マウス血中においてメチル化したヘモグロビンが存在することを認めた。曝露期間中はWestern blot法において検出したFA-Hbの面積値が増加したことから,FA-Hbがホルムアルデヒドの曝露指標となると考えられる。また,マウスのヘモグロビンの寿命が40日であること及び,曝露後一定期間曝露のない状態でいてもFA-Hbの値が減少しなかったことから,この付加体が累積的な曝露指標にもなりうると考えられる。非曝露の対照群の値に,やや大きな変動があった。Western blot法での測定は,バックグラウンドの値が高くなる可能性も考えられる。4日曝露後の血中FA-Hb量よりも,対照群の方が大きな値を示した個体も存在している。使用している抗体は,ポリクロナール抗体であり,より特異性のあるモノクロナール抗体を作成することで,体内の付加体の真値を測定することができると示唆される。ヘモグロビンの寿命を考慮に入れると,FA-Hbが累積的な曝露指標になりうると考えられる。今後,実際に化学物質過敏状態に苦しむグループにおける調査に着手し,臨床としての影響指標の意義,累積的な曝露を評価できる曝露指標の意義を検討していくことが急務である。これまでの調査結果と参照することで,本指標が曝露指標のみでなく影響指標としても診断に貢献することが望まれる。
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