2005 Fiscal Year Annual Research Report
有明海「大陸沿岸遺存生態系」仮説:主要河川間の比較と安定同位体比の応用による検証
Project/Area Number |
05J02310
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
鈴木 啓太 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 有明海 / 河口域 / 大陸沿岸遺存生態系 / 安定同位体 / 特産種 / 高濁度汽水域 |
Research Abstract |
1.筑後川,緑川,球磨川において平成17年4月〜平成18年3月に毎月1回(大潮期)行った定点調査により,河口域の環境特性および生物相は河川ごとに異なることが明らかとなった.最も高濁度で長い汽水域を持つ筑後川は,1年を通して仔稚魚と動物プランクトンの分布密度および特産種の出現数が最も多かった.高濁度汽水域における動物プランクトンの高密度分布および特産種の出現は緑川では確認されたが,球磨川では確認されなかった.2.筑後川の高濁度汽水域において平成17年3月〜8月に毎月約4回行った集中調査により,環境特性は潮汐周期および季節に伴って変動し生物相にまで影響していることが示された.季節によらず小潮期は濁度が低下して懸濁粒子のクロロフィルa量は増加する傾向にあるが,それらの絶対量は水温や河川流量の季節変化の影響を受けた.動物プランクトンおよび仔稚魚の分布密度は春と夏に高く秋と冬に低かった.3.筑後川の高濁度汽水域では懸濁粒子および高密度に分布する特産カイアシ類Sinocalanus sinensisの炭素安定同位体比はいずれも-27〜-26‰であった.このことから高濁度汽水域生態系は海水の植物プランクトンや底生微細藻類ではなく,淡水の植物プランクトンや陸上植物由来の有機物を基盤とすることが推察された.4.筑後川河口域における優占魚種であるスズキ稚魚の食性について空間的・時間的な変化を調査した結果,S.sinensisおよび特産アミ類Acanthomysis longirostrisに強く依存していることが明らかとなった.
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