2006 Fiscal Year Annual Research Report
有明海「大陸沿岸遺存生態系」仮説:主要河川間の比較と安定同位体比の応用による検証
Project/Area Number |
05J02310
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
鈴木 啓太 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 有明海 / 安定同位体 / 河口域 / 高濁度汽水域 / 大陸沿岸遺存生態系 / 特産種 |
Research Abstract |
1.昨年度に引き続き,筑後川および緑川の河口域において,環境および生物相の季節変動を把握するため,2006年12月まで月1回以上の頻度で調査を行った.その結果,昨年度と同様に,春・夏季は秋・冬季に比べ,植物プランクトン生産が高く,仔稚魚の種数および生物量も多いことが確認された.現在,球磨川河口域の調査試料とともに,より詳細な分析を進めている.2.特産種が最も多く生息し,「大陸沿岸遺存生態系」が最も明瞭に確認できると考えられる筑後川河口域の高濁度汽水域において,夏季の環境および生物相の短期的な動態を調べるため,2006年6〜8月に集中調査を行った.その結果,環境および生物相は潮差や河川流量の短期的変動の影響を強く受けることが明らかとなった.現在,筑後川の河川流量が極めて少なかった2005年の集中調査の結果と比較し,環境および生物相の動態を詳しく解析している.3.筑後川河口域の高濁度汽水域に高密度に生息し,高濁度汽水域を成育場とする多くの仔稚魚の重要な食物であると考えられる,有明海特産のカイアシ類Sinocalanus sinensisの塩分耐性試験を行った.その結果,塩分15までは直接移行後72時間の生残率が60%以上と高いが,塩分20では直接移行72時間後の生残率は50%未満,塩分30では直接移行直後にほぼ全滅であった.このことはS. inensisか主に塩分10未満の高濁度汽水域にのみ生息することと深い関わりがあると推察された.
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Research Products
(2 results)