2007 Fiscal Year Annual Research Report
コナラ・ミズナラ稚樹における昆虫類の食害と土壌養分条件の影響
Project/Area Number |
05J02313
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
水町 衣里 Kyoto University, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | コナラ属 / 植食者 / 生物間相互作用 / 補償成長反応 / 誘導防御反応 / 土壌養分 / 多次フラッシュ / シュート |
Research Abstract |
これまでに、コナラ稚樹は、食害を受けても、その年のうちに、土壌養分条件に応じた補償成長反応や誘導防御反応を行うことができることを示してきた。長い寿命をもつ木本植物は、一年生の草本植物とは異なり、過去の成長の履歴(樹形、炭素や窒素の蓄積)が様々な形で将来の成長に関わるので、食害を受けた翌年以降にどのような反応が現れるのかを調べることも必要である。 今年度は、食害の有無と土壌養分条件の操作を開始して2年目のコナラ稚樹がどれほどの成長量を示したのかを調べた。枝系単位で、前年の成長量や葉面積被食率が次の年の春に生産されたシュートユニット(1次EU)の数や長さに与える影響を解析したところ、前年の葉面積被食率に応じて1次EUの数は増加することが示された。前年に食害を受けた個体、特に土壌養分の少ない個体では、個々のEUの長さが減少する傾向がみられた。しかし、前年の葉面積被食率に応じたEU数の増加を受けて、食害を受けてきた個体も受けなかった個体と同等のEU伸長量、葉数を確保していた。 これらの結果から、コナラ稚樹は、食害を受けても、その年のうちに、土壌養分条件に応じた補償成長反応や誘導防御反応を行うことができ、翌年の成長を減少させることはないことが示された。稚樹にとって、葉の損失は、個体の生存や成長に大きく影響する。つまり、稚樹段階で、食害に対してどのような振る舞いをするのかは、コナラの個体群や種の存続にとって重要であると考えられる。環境の異質性の高い森林内で、利用できる資源の状態に合わせた対植食者戦略をとることが、コナラ個体群の存続にとって、重要な役割を果たしている可能性が示唆された。
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Research Products
(2 results)