2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J02324
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小林 知里 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ルリオトシブミ属 / マイカンギア菌 / 葉巻 / 分解特性 / リグニン / 多糖類 / 少糖類 / 羽化率 |
Research Abstract |
本年度は、オトシブミ科の多様な植物加工行動のうち、ルリオトシブミ属による葉巻(揺籃)への菌接種の効果についての研究を中心におこなった。本属は寄主植物の葉を切り取り、そこに雌が特別の器官(マイカンギア)で保持している菌を植え付け、産卵したのち葉をたたんで葉巻を作り幼虫は菌の生えた葉巻を食べて育つが、この菌の効果については全くわかっていなかった。そこで、ハギルリオトシブミを材料とし、この菌の分解特性、さらに羽化率への影響を調べた。その結果、まず本種のマイカンギアからある特定の菌2種が分離され、雌はどちらか一方の菌のみを持つことがわかった。また、これらの菌は葉巻表面において主に卵期に優占していた。これらの菌は葉のリグニンや多糖類といった植食性昆虫にとっての難分解物質の分解には貢献していないことが明らかとなり、難分解物質を分解して葉巻の栄養価を高めることが菌の役割ではないことが示唆された。一方で、葉巻の少糖類はマイカンギア菌が存在すると高濃度に保たれる傾向にあることがわかり、菌のひとつの効果として、そのままだとすぐに様々な菌により速やかに分解されてしまう貴重なエネルギー源である小糖類を、幼虫が利用できるように雑菌から守っていることが考えられた。さらに、菌を接種しない葉巻を食べた場合の羽化率は菌接種葉巻の場合より有意に低く、孵化直後にほとんど摂食できずに死亡していた。このことから、菌の主な効果として葉巻の栄養価を高めることよりも、毒性のある菌や病原菌の発生を抑え死亡率を低くすることにある可能性が示唆され、植物加工における新しい進化の可能性を示唆する結果である。この一連のマイカンギア菌の研究に加え、研究計画にあるように日本各地およびラオスで採集を行い、オトシブミ科のDNA用標本の充実に努め、日本産およびラオス産の新たな種を加えることができた。
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