2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J02324
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小林 知里 Kyoto University, 大学院・人間・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | オトシブミ科 / 植物加工 / 葉巻きの進化 / 寄生蜂 / 分子系統樹 / 祖先形質の復元 / 摂食部位の進化 |
Research Abstract |
本年度は昨年度に引き続き、様々な植物加工を行うオトシブミ科について寄生蜂群集を調べ、合計20種について寄生蜂群集を明らかにした。まず、加工が異なる種間では寄生蜂群集が大きく異なることが明らかとなり、植物加工と寄生蜂からの攻撃とが強く結びつくことを示した。また、葉を巻く種の寄生率は潜葉性の種より有意に低く、葉巻き行動は寄生回避に効果的であることが示唆された。具体的にはヒメコバチ科・ホソハネコバチ科の寄生が葉を巻くことで回避されており、さらに葉巻きを密封することでタマゴコバチ科Ophioneurusの寄生も回避できていることがわかった。複雑に折り畳む葉巻き行動を有するオトシブミ亜科では、特殊化した寄生蜂(タマゴコバチ科Poropoea)からの寄生を受け、回避できている種はほとんどいなかった。また、幼虫が茎を食べる種では、寄生率は0%であった。こうした結果は、オトシブミ科の「葉巻き」という特殊な植物加工の進化に、寄生蜂が大きく関わったことを初めて示唆するデータとして重要である。また、日本産オトシブミ科60種についての分子系統樹を基に、祖先形質の復元解析を行うことにより、オトシブミ科での葉巻き行動は何度も独立に起源し、獲得後1度も失われていないことがわかった。さらに、幼虫食性の進化の方向としては、茎・葉柄食から葉食へと進化したことが示唆され、葉食化したことにより増大した寄生圧を回避するために、葉巻き行動が何度も起源したことが示唆された。これらの結果は、植食性昆虫の植物利用の進化パターンとしてのみならず、昆虫の行動の進化を考える上で貴重な結果であると言える。
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Research Products
(3 results)