2007 Fiscal Year Annual Research Report
ボルネオ島河川急流域にみられるボルネオハヤセガエル属の種分化について
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05J02325
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
島田 知彦 Kyoto University, 大学院・人間・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 核DNA / 計量形態学 / ボルネオハヤセガエル属 / ボルネオ島 / 隠蔽種 / 幼生の形態 / 分類学 / 音声 |
Research Abstract |
平成19年度は、これまで蓄積したデータをまとめ、必要な部分を補完する研究を行った。前年度までに採集した標本に加え、平成19年7月に野外調査を行って採集された標本を用い、遺伝的・形態的な解析を行った。また前年に引き続き、マレーシアのKinabalu Parkに所蔵されている標本に関して、一週間ほど標本計測のためだけに現地に滞在して、詳細な計測を行った。その結果を多変量解析的な手法を用いて解析したところ、これまで検出することができなかった種間差を検出したり、基準標本の分類学的な帰属を議論したりすることが可能になった。また、これまでミトコンドリアDNAのみに基づいて議論を行ってきたが、これにはいくつかの問題点が存在するため、核DNAマーカーの開発を試みた。その結果、これまで両生類で系統解析に用いられたことのない領域を含む4つの核DNA領域の解析に成功した。 以上の研究の結果の一部は、報文として公表され、また現在核DNAとミトコンドリアDNAの持つ情報の違いに着目した論文を準備中である。その他の結果は、学位論文の形で完成されているが、その内容に関しては今後順次一般誌に投稿してゆく必要がある。学位論文は、4種の新種の報告を含む、ボルネオハヤセガエル属の系統分類学的研究であり、これまできわめて混乱状態にあった幼生と成体との対応付けや、分布・生息域などの情報に関して多くの新しい知見を盛り込んでいる。 また、幼生の生息環境や成体の音声などについても引き続きデータを収集した。その結果はまだ公表するには至っていないが、特に音声に関して、解析機器を改良した結果、これまで単一の音声だと思われていた繁殖音に種間差の存在することを示唆する結果が得られ、今後の情報の蓄積により、分類学的形質として音声を用いることができるようになるかもしれない。
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Research Products
(3 results)