2005 Fiscal Year Annual Research Report
水中鳴音情報解析によるジュゴンの回遊と個体間情報伝達に関する研究
Project/Area Number |
05J02327
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
市川 光太郎 京都大学, 情報学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ジュゴン / Dogong dugon / 受動的音響観察 / 鳴音 / 来遊周期 / 鳴き返し |
Research Abstract |
本研究では、ジュゴンの回遊および個体間情報伝達に着眼し、有効なジュゴン保護策に資する情報を収集することを目的とする。本研究では、ジュゴンの鳴音を録音し音響学的な解析を施すことでジュゴンの行動観察を行う。モデル海域として、京都大学と強固な研究協力体制が整備されているタイ国南部のタリボン島周辺海域を選定した。当該海域は先行研究において、タイ国内で最大のジュゴン個体群が確認されている。2005年度の調査では、主にジュゴンの来遊周期の解明とジュゴンの鳴き返し反応に関して検証した。 ジュゴンの鳴音を用いた行動観察手法の精度を評価し、実際の調査現場において適用可能であることを実証した。この結果は、Proceedings of the international Symposium on SEASTAR and Bio-logging Scienceに掲載された。 ジュゴンは干潮時には干出する干潟において摂餌を行うことが知られている。このことから、ジュゴンの行動は強い時間的制約下にあることが分かる。ジュゴンの行動に見られる周期性を検証するため、タリボン島南部海域において連続5日間の音響観察を実施した。音響観察の結果、ジュゴン鳴音の受信頻度にはおよそ25時間の周期が確認され、潮周りによって来遊個体数が変化することが示唆された。ジュゴンは概日あるいは概潮汐及びその両方の影響を受けた生活サイクルを営んでいる可能性が示唆された。 ジュゴンは夜間、複数個体の存在下で発声していたことが分かった。ジュゴン鳴音が個体間でやりとりされる情報伝達媒体になっていた可能性が示唆された。ジュゴンの個体間情報伝達を検証するため、タリボン島南部海域においてジュゴン擬似鳴音再生実験を実施した。人工的に合成された4種の擬似鳴音を水中で再生したところ、ジュゴン野生個体から鳴き返し反応を得ることができた。今後、ジュゴンの反応行動を遊泳軌跡によって評価することが重要である。
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Research Products
(1 results)