2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J02360
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
仲澤 剛史 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 理論生態学 / 数理モデル / 個体群ダイナミクス / 群集構造 / 安定性 / 生活史 / 適応 / 可塑性 |
Research Abstract |
従来の理論研究では、シンプルな仮定のもとに構築された数理モデルによって生態系は不安定になりやすいと予測されていた。しかし、実際の生態系はそれほど不安定ではないと考えられている。そこで、理論研究と実証研究の間のこのギャップを解消するメカニズムとして「生物が餌や天敵の密度等の状況に応じて適応的に振舞うことが生態系の安定性に寄与しているかもしれない」という仮説を、数理モデルを用いて検証することを目的とした。まず繁殖戦略に着目して「どれだけ産むか」もしくは「子にどれだけ投資するか」といった形質を柔軟に変えられると仮定した場合に、個体群ダイナミクスの安定性がどうなるかを解析した。その結果、親の繁殖努力と生存のトレーオフもしくは子におけるサイズとパフォーマンスのトレードオフの関数形によって、個体群動態の安定性が実現されることが分かった。また、以下のような具体的なケースを想定した数理モデルを構築し、それぞれ興味深い結果が得られた。(1)多くの魚類で外来魚の移入や漁獲圧の増加により体サイズが急激に増大する。成長速度の変化は繁殖や防衛等を通じて魚類の個体群動態に大きな影響を与えることが示唆された(2)多くの生物は別々の場所で採餌と繁殖を行う。その移動タイミングが適応的に柔軟に変わることで、それぞれの場所の環境条件に依存しながら、系全体の安定性が維持されることが示唆された。以上の研究は現在、投稿済みもしくは投稿予定である。
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