2006 Fiscal Year Annual Research Report
更新世末期から完新世初頭の社会変化の研究:日本の最寒冷期以降の居住形態の分析から
Project/Area Number |
05J02366
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Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
国武 貞克 国学院大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 後期旧石器時代 / 社会変化 / 居住行動 / 石材消費戦略 / 領域分析 / 高原山 / 黒曜石原産地遺跡 / 石材分析 |
Research Abstract |
本研究課題では更新世末期から完新世初頭の社会変化の究明を研究課題としている。そのために、本研究の第一の目的は、まず後期旧石器時代後半期にあたる最寒冷期から縄文時代初頭にあたる完新世初頭までの各細別時期の居住形態を、各地域の石器に利用されている石材の産地の分析から高精度に分析することである。その際、具体的な行動領域や移動ルートについて石器石材の観点から具体的に解明することを当面の主たる目的としていた。そこで、昨年度は申請者が領域研究の中心的なフィールドとしている関東地方において旧石器石材に多用されている高原山産黒曜石に着目し、栃木県矢板市高原山において、石材獲得活動が行われたであろう原産地遺跡の探索を行った結果、黒曜石の産出地点と、後期旧石器時代の大規模な原産地遺跡を発見した。 今年度はこの遺跡の範囲を決定するための分布調査を行った。遺跡全体を100mメッシュのグリッドを設定し、西端のグリッドから順に踏査を行った。遺跡全体の6分の1程度の踏査を終えた。また遺物包含層が谷に削られて露出している箇所を発見したため、遺物包含層断面の調査を行った。調査の内容は遺物露頭断面を分層し、表面に露出している石器の位置を測量して記録後に層位ごとに抜き取り回収した。そして土壌サンプルを採取し、予備的な火山灰分析を行った。この露頭から回収された石器を整理し分析したところ、最下層から後期旧石器時代初頭の台形様石器がまとまって検出された。この層準には多数の剥片・砕片がまとまっていた。これらのことから高原山黒曜石原産地遺跡群は後期旧石器時代初頭から利用されていたことがわかった。従来信州黒曜石産地の事例から、黒曜石原産地における資源の集約的な開発は縄文時代からとされ、原石の集中的な採取も後期旧石器時代後半期からと理解されてきたが、本研究による調査により後期旧石器時代初頭から原産地の集約的な開発が行われていた可能性が高いことが示された。この成果は、来年度の学会、学術誌に発表の予定である。 このほかに、新潟県、東京と、千葉県、埼玉県の旧石器時代遺跡から出土した黒曜石製石器の産地分析を行った。方法は昨年度に考案したエネルギー分散法による蛍光X線分析である。黒曜石石器の分析は来年度も継続して対象地域の範囲を広げて行う予定である。分析した成果は来年度に学術誌に発表の予定である。
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