Research Abstract |
本研究は,融液からの半導体結晶成長時に導入される不純物縞形成の主要因のひとつである液柱構造型の融液内温度差マランゴニ対流を解明して,対流制御に有用な情報を与えることを目的としている.特に,対流の駆動力であるマランゴニ数Maが増大して対流が不安化し複雑流動に至るまでの過程において未解明な現象の中から,今年度の課題として以下を設定した. 1)対流が軸対称定常流から3次元定常流に遷移する臨界Ma数近傍の流れの解明において,実験的に設定することが困難である低温度差条件を実現するのに,自由表面を局在化する方法が有効と提案されている.この方法を適用した場合に,流れの不安定性メカニズムの変化が生ずることが予想されるため,これを数値解析的に検証する. 2)不透明な金属性融体においては,内部流れの直接可視化が困難であるが,内部流と連成する周囲気体流れを可視化することによる内部情報の抽出を試みる. 1)については,軸対称定常流の3次元擾乱に対する線形安定性解析を行った.自由表面を局在化した場合,通常の液柱系では見られない軸対称定常流から振動流への直接遷移が存在することを以前に報告したが,この際,異なる不安定化機構の関与が示唆された.本年度,不安定擾乱についてエネルギー解析を行った結果から,第1遷移臨界での不安定性に関与する要素メカニズムは,楕円型不安定性と遠心力不安定性の双方であり,自由表面の局在化によって楕円型不安定性の効果が減少することを明らかとした.加えて,遠心力不安定性が相対的に強くなるにつれて,2つの振動型モードを含む,4つの異なる不安定化メカニズムが現れることを見出した. 2)については,本年度は要求される実験系の構築に注力し,トレーサー粒子,PIVを用いた光学系,加熱装置等の設計および実装を行った.問題となった気相側の激しい浮力対流を,上下ロッド付近に遮蔽版を導入することで抑制した.加熱炉内の均熱化,可視化における光量不足などを,今後解決すべき課題として抽出した.
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