2006 Fiscal Year Annual Research Report
高等植物のDNA複製・修復機構におけるDNAポリメラーゼの機能解析
Project/Area Number |
05J02431
|
Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
内山 幸伸 東京理科大学, 理工学部, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 分子生物学 / 生化学 / DNA修復 / 植物 / DNAポリメラーゼ / RNAi / DSB |
Research Abstract |
初年度において作成に成功したDNAポリメラーゼλRNAi個体(シロイヌナズナ)の表現形を解析した。この株のF2世代について、背丈、花、葉、種などの形状を野生株の個体と比較し、観察したところ、全く異常が見られなかった。次にDNA損傷因子(UV、アルキル化剤、過酸化水素など)に対する感受性を処理後の日数に対する生存曲線及び根の生長率を求めることにより調べた。その結果、DNA二重鎖切断(DSB)試薬であるブレオマイシンに対して野生株の個体よりも強い感受性を示した。また、その他の因子に対しては野生株のものと変わらなかった。このことにより、DNAポリメラーゼλはDNA二重鎖切断修復機構に関わっていることが示唆された。さらに、非常に興味深いことに、ブレオマイシンと同時にアフィディコリンを添加した場合、ブレオマイシン単独で処理した場合よりも感受性が強く現れた。アフィディコリンは他のDNAポリメラーゼ(主にファミリーB)の酵素阻害剤である。このことは、DSBが生じると様々なDSB修復機構が働き出し、それらのどこかでPolλが含まれていてDNA合成を担っているが、DSBは特に危険なDNA傷害であるので、他のDNAポリメラーゼが機能しているシステムも独立して存在し、お互いをバックアップしていると考えられる。このようなバックアップシステムの存在により、DNAポリメラーゼλの機能が単独で失われた場合でも、通常状態での表現形には影響なかったと思われる。同時並行して行った生化学的会解析の結果と合わせて、DNAポリメラーゼを中心とした高等植物のDNA修復の分子機構を解明することができた。高等植物のDNA複製・修復・組換え機構は殆ど解析されずにいる。しかし、今後の農業のためにはこれらの分子レベルの解析は必要となり、本研究はそのさきがけ的なものとなると考えられる。
|
Research Products
(3 results)