2005 Fiscal Year Annual Research Report
光学格子中Bose気体における強相関効果と非平衡状態に関する理論的研究
Project/Area Number |
05J02446
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
小鍋 哲 東京理科大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ボーズ凝縮 / 超流動の不安定性 |
Research Abstract |
絶対零度近傍の光学格子中の凝縮体を記述するGross-Pitaevskii(GP)方程式を解析すると、凝縮体が不安定になる2つの異なる領域があることがわかる。ランダウ不安定領域とダイナミカル不安定領域である。ランダウ不安定領域は励起状態のエネルギーが負になる領域である。この不安定性は格子系に限らず、超流動状態において一般的なものである。一方、ダイナミカル不安定領域は励起状態のエネルギーが複素数になる領域である。この不安定性は光学格子中のGP方程式が周期性を持っていることと非線形であることに起因する。これら2つの不安定機構で重要な点は、ダイナミカル不安定領域は絶対零度で存在するが、ランダウ不安定領域はフォノンを励起させる機構とフォノンを吸い込む散逸機構が必要となり、有限温度でしか存在しないという点である。2005年には、FlorenceのInguscioのグループにより、この2つの異なる不安定性がそれぞれ実験で示されている。彼らの実験結果も、ランダウ不安定性への有限温度の効果の重要性を示している。即ち、有限温度の効果を含まないGP方程式を用いる限り、ミクロな観点からランダウ不安定領域を理解することはできない。従って、有限温度におけるボーズ凝縮体の不安定性を理解するには新たな理論的枠組みが必要になってくる。 そこで、今回我々は有限温度の効果を散逸項として含んだ凝縮体オーダーパラメータの運動方程式を導出することにより、凝縮体の不安定性について調べた。得られた方程式を線型化し解くことにより、"collisionalダンピングプロセス"と"Landauダンピングプロセス"の2つの異なるプロセスによる、新たな不安定機構を見いだした。さらに、この不安定領域が通常のランダウ不安定領域と完全に一致することを示した。 以上の結果はFlorenceの実験結果を定性的に説明するだけでなく、光学格子中のボーズ凝縮体の不安定性に対してミクロな描像を与えるものである。
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