2007 Fiscal Year Annual Research Report
環境に適応する過程で冗長となった遺伝子の退化による生物の進化
Project/Area Number |
05J02667
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
郷 康広 The Graduate University for Advanced Studies, 葉山高等研究センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | 種分化 / 遺伝子発現 / ゲノム推化 / 比較ゲノム / 霊長類 / ショウジョウバエ / 環境適応 / 嗅覚受容体遺伝子 |
Research Abstract |
平成19年度は、平成18年度に引き続き、主に以下の2つの研究を推進した。 (1)霊長類における嗅覚受容体遺伝子群の進化 ヒトにおける嗅覚はマウスなどの哺乳類に比べて著しく退化していることはよく知られている。この嗅覚退化がヒトに特徴的な現象であるのか、またヒトに至る進化過程でどのような変遷を遂げたかを明らかにするため、チンパンジーおよびアカゲザルの全ゲノム配列から嗅覚受容体(以下OR)遺伝子を同定し、その進化様式を解析した。その結果、ヒト・チンパンジー・アカゲザル全てにおいてOR遺伝子の急速な退化が認められた。しかし、その退化の様相は、決してランダムではなく、それぞれの種ごとに環境からのフィードバックにより不必要な嗅覚遺伝子を退化させることにより、種それぞれのOR遺伝子のレパートリーを形成するに至ったことを明らかにした。 (2)ショウジョウバエ属における遺伝子発現解析による種分化機構の解明 ゲノム情報(ドライ)とマイクロアレイによる遺伝子発現情報(ウェット)を組み合わせることにより、近縁種間の遺伝子発現パターンの違いおよびその転写制御領域に起きる変化がいかに種分化に寄与し得るかを解明することを目的とした。ショウジョウバエ属の近縁3種(Drosophila melanogaster, D. sechellia, D. simulans)間のマイクロアレイによる遺伝子発現解析を行った。その結果、遺伝子発現ネットワークの可塑性と、遺伝子構造(エクソン長、イントロン長)やmRNAそのものの発現量には非常に高い相関があることが認められ、遺伝子発現ネットワークの変遷とその後の種分化に寄与しうる様々な遺伝的要因を明らかにした。
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Research Products
(3 results)