2006 Fiscal Year Annual Research Report
南アジア系移民のローカル・ヒンドゥーイズムの生成-ビルマの事例から
Project/Area Number |
05J02672
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
中井 潤子 総合研究大学院大学, 文化科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 仏教 / 政治 / ヒンドゥー教 / ヒンドゥー・ナショナリズム / 宗教 / 南アジア系移民 / 寄進 / RSS |
Research Abstract |
今年度は、前年度の調査結果を纏めた。また、7月に補足調査を行い、新たな事実を発見し、成果を得た。ビルマは、仏教徒が9割近くを占める。また、僧侶、寺院への寄進行為に率先して参加して、その映像は国内テレビを通して、国民に伝えられる。いわば、政治家が敬虔な仏教徒であることをアピールする場が日常的にもたれ、仏教行事が一種の政治的セレモニーになっているのである。 19世紀後半にビルマに移住した南アジア系移民のうち、ヒンドゥー教徒は、ビルマ仏教徒と平和的に共生している。それと同時に、ヒンドゥー・ナショナリズムを普及させるヒンドゥー教の教団が全国に支部を置いている。しかし、ビルマ仏教徒には、仏陀展覧会を開いたりする敬虔な仏教の団体であることをアピールしている。インド向けにはヒンドゥー・ナショナリストの団体であり、ビルマ向けには仏教の団体であるという、いわば二つの顔を持っているのである。 また、ビルマのヒンドゥー教徒による仏教の寄進行為の参与観察により、成果を得た。ヒンドゥー教徒が僧侶に寄進を行うのであるが、ビルマ仏教徒である政治家が招かれていて、両者は仏教の吉祥教を共に唱える。このお経は、ビルマ仏教徒が唱えるお経の中で、最も人々に親しまれているものである。それはパーリ語で書かれているが、ビルマのヒンドゥー教徒は仏陀展覧会において、独自にサンスクリット語に書き換えを行った。ヒンドゥー教の聖典をしるすサンスクリット語にパーリ語のお経を書き換えることで、自らの宗教の教理に矛盾することなく、共生を成している一事例であるといえる。以上のような調査結果から、ビルマによるヒンドゥー教徒の移民たちが宗教を政治化させて、ホスト社会に共生していることがいえる。
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