2005 Fiscal Year Annual Research Report
非侵襲的脳活動計測を用いたヒトの報酬系における神経修飾物質系の機能の解明
Project/Area Number |
05J02792
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
田中 沙織 奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | fMRI / 報酬 / セロトニン / 強化学習 / 大脳基底核 |
Research Abstract |
「神経修飾物質系のメタ学習仮説」は,神経修飾物質の機能について,動物実験や臨床現場から得られた知見を,計算理論的な観点からモデル化することにより,脳における高次の学習機構の実態に迫るものである.神経修飾物質のセロトニンは,躁うつ病などの精神疾患の原因のひとつであるといわれているが,いまだにその仕組みや働きは明らかになっておらず,その機能解明が待たれている.我々はセロトニンの報酬系における機能モデルの解明ために,セロトニンが衝動性と深く関わるという先行研究から,報酬予測の時間スケールを制御するという作業仮説を唱えた.本年度は,セロトニンが報酬もしくは罰を基にした時間遅れのある学習課題に与える影響を調べるための実験を行った.セロトニンの前駆物質であるトリプトファンを健常者12名に投与することで,被験者の脳内セロトニン濃度を過剰,通常,不足の3状態に調節した.各状態で,行動から報酬まで時間遅れが存在する刺激-行動連合学習課題を被験者に行わせた.その結果,時間遅れのある罰を基にした学習において,セロトニンレベルの差が有意に見られた.すなわち,セロトニンレベルが低い状態では学習が遅れ,高い状態では学習が促進された.この結果は,セロトニンが現在の報酬を,どれぐらい過去の行動までさかのぼって関連付けるかという時間スケールの制御に関わることを示唆しており,衝動性の解明に繋がる新しい発見であるといえる.この結果を2005年11月にアメリカ合衆国・ワシントンDCで行われた国際学会"Society for neuroscience 35th annual meeting"において発表した.
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