2005 Fiscal Year Annual Research Report
未分化ES細胞特異的に発現する遺伝子群のエピジェネティックな発現調節機構の解明
Project/Area Number |
05J02849
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
今村 公紀 京都大学, 大学院・医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ES細胞 / DNA methylation / GS細胞 / Oct3 / 4 / Sox2 |
Research Abstract |
ES細胞特異的に発現する遺伝子群の転写制御領域は、概してES細胞では低メチル化状態にあり、体細胞ではメチル化を受けていた。しかし、類似した発現パターンにも関わらず、メチル化のパターンは遺伝子間で異なり、大きく4パターンに分類された。次にDNAのメチル化と発現の因果関係を調べるために、レチノイン酸によるES細胞分化のTime course解析を行った。多くの遺伝子の発現は分化誘導24時間後には1/2以下に低下し、48時間後にはほぼ消失していた。DNAは分化誘導48時間後にメチル化が生じ始めるが、120時間後でもMEFsや成体臓器と比べて明らかに低メチル化状態であった。これは、DNAのメチル化は発現消失の原因ではなく結果として生じることを示している。一方でヒストンH3のアセチル化は、分化誘導48時間後には完全に脱アセチル化されており、発現消失と相関していた。また、DNAのメチル化はランダムに起こるのではなく、'メチル化センター'領域を中心に周囲に拡散する傾向を示した。また、大部分の遺伝子は精子幹細胞株のGS細胞でも発現し、DNAはES細胞以上に低メチル化状態であった。ところが、Nanogのような一部の遺伝子はGS細胞では発現しておらず、これらはいずれもOct3/4とSox2の標的遺伝子であった。これらの遺伝子のOct3/4とSox2の結合領域は、オスの生殖系列において体細胞以上の高メチル化状態を呈していたが、メスの卵細胞やプロモーターなど他の領域では高メチル化は認められなかった。DNAの脱メチル化剤である5-aza-2'-deoxycytidineでGS細胞を処理すると若干の発現誘導が認められたことから、DNAのメチル化が実際に発現抑制に働いていることが明らかとなった。現在、Oct3/4とSox2の標的遺伝子の抑制が適切な生殖系列分化に必要であると考え、さらなる解析を行っている。
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