2007 Fiscal Year Annual Research Report
温度ストレス下でのイネ登熟過程における根-地上部コミュニケーション機構の解明
Project/Area Number |
05J02926
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Research Institution | National Agricultural Research Organization |
Principal Investigator |
荒井 裕見子 (三王 裕見子) National Agricultural Research Organization, 作物研究所稲収量性研究チーム, 特別研究員(PD)
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Keywords | 高水温 / 稲 / root / shoot / 水吸収 / 窒素吸収 / 窒素分配 |
Research Abstract |
根圏環境は、根における代謝作用や形態形成などに与えるさまざまな変化を介して、養分吸収や蓄積に影響を及ぼす。昨年度までの研究から土耕栽培では、登熟期において36℃のような高温や18℃のような低温では、温度が根量を抑制することや出液速度を低下させることを明らかにした。しかし根への温度ストレスによって、水や窒素の吸収や吸収した窒素の地上部への転流が受ける影響について明らかでなかった。そこで本年度は地温が窒素の取り込みと地上部への転流に及ぼす影響を15N安定同位体を用いて水耕栽培で検討した。開花後の水温処理によって、乾物重と乾物分配割合は、処理14日後では、36度で地上部に対して根重の割合がやや小さい傾向が認められた。蒸散速度は数日は温度が高いほど多くなったが、9日以降になると36度で低下した。水と同様に、処理1日後の窒素吸収量は36度まで高温になるほど促進された。これは高温ほど根での蓄積割合が低く、茎への蓄積割合が高いことより、根への窒素の取り込みに加えて地上部への窒素の転流が促進されたことが一因と考えられる。処理14日後の窒素吸収量は、18℃で最も低く30度で最も高かった。18度では生育が小さくなること、また窒素の根への蓄積割合がやや高かったことより、根への窒素の取り込みの低下に加えて、地上部への窒素の転流の低下も関与する可能性が考えられた。また1日後の吸収の最も高かった36℃では14日後では30度より低くなったことより、高温による吸収の促進は持続しないと考えられた。これは根量が低下すること、また根への蓄積割合は増加しなかったことより、根への窒素の取り込み活性の低下が関与する可能性が考えられた。以上より、極端な低温(18度)や高温(36度)の処理下では窒素吸収が低下すること、また低温と高温では窒素吸収と蓄積に関わるメカニズムが異なる可能性が示唆された。
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Research Products
(2 results)