2006 Fiscal Year Annual Research Report
温度ストレス下でのイネ登熟過程における根-地上部コミュニケーション機構の解明
Project/Area Number |
05J02926
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
三王 裕見子 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 作物研究所稲収量性研究チーム, 特別研究員(PD)
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Keywords | 水稲 / 高温登熟 / 地温 / 白未熟粒 / 根 / 光合成 / 出液 / 蒸散量 |
Research Abstract |
近年の高温による登熟障害の要因として,栽培管理の問題による根の機能低下が指摘されている.しかし登熟障害の研究は温度の地上部の影響に着目したもので,根の機能を介しての影響を検討したものは少ない.そこで温度ストレスが根の機能に及ぼす影響を明らかにし,根を介した温度ストレスが乾物生産や登熟障害米の発生に及ぼす影響を明らかにする.さらに日照が不足した条件における地温の影響も併せて検討した.栽培は土耕栽培に加え,土壌要因による影響を除いた水耕栽培を行った.18,25,30,36度の温度処理と25,36度においては80%遮光処理も行った. その結果土耕栽培では、処理21日以降にコシヒカリと初星とも36度区で地下部重が減少することによってRoot/Shoot比が低下した.処理後14日までは,根や地上部の性質に影響を及ぼさなかったが,処理21日以降の出液速度は18,36度区で小さく,気孔伝導度は18度でわずかに低下した.地温による影響は登熟中期以降だったため,登熟歩合や白未熟粒発生率への影響は小さかった.遮光条件下では,温度に関わらず地上部地下部重が低下し,登熟歩合が低下し白未熟粒発生率が高くなった.水耕栽培では,処理後21日の地下部乾物重は18,36度で小さい傾向があった.積算蒸散量は処理後10日までは違いはなかったが,その後18と36度区で低下しており,出液速度は処理21日後では18度で低下していた. 以上より36度のような極端な高温や18度の低温では,温度が直接的にも根の形態的発達を抑制し,18度の低温では水・養分吸収機能を抑制したが,これらの地上部の乾物生産・品質への影響は小さかった.さらに日照不足などの不良環境で,温度の影響が助長されることはなかった.今後は,温度ストレスが吸収された窒素・同化された炭素の体内分配,根や出液中の成分や植物ホルモン合成に及ぼす影響を検討する.
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