2005 Fiscal Year Annual Research Report
大気中二酸化炭素上昇下の作物の葉の老化過程における根活性の役割の解明
Project/Area Number |
05J02945
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Research Institution | 独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構 |
Principal Investigator |
下野 裕之 独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構, 東北農業研究センター・地域基盤研究部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 大気中二酸化炭素上昇 / 光合成 / 老化 / ヘキソース / 根 / シグナル伝達 |
Research Abstract |
大気中二酸化炭素(CO_2)濃度上昇の作物の葉の老化促進における根の活性の役割を明らかにすることを目的とする。本年度は、2段階のCO_2条件(外気濃度、高濃度=外気+200μmol mol^<-1>)で生育させたイネについて、老化の始まる穂揃期から成熟期までの根域温度を3水準(低温=-3℃、中温=±0℃、高温=+3℃)に制御し、根の活性と老化との関係について検討した。計測は登熟中期に行った。 葉のルビスコ量(単位葉面積あたり)は、高CO_2で外気CO_2に比べ29〜47%減少し、その程度が低温条件で大きかった。しかし、光合成速度は、高CO_2で外気CO_2に比べ11〜27%低下するが、その程度は逆に高温条件で大きかった。光合成速度は、ルビスコの量に加えて活性の影響を受けるため、このような根域温度への異なる応答は活性の差を反映したものと推察される。ただ、ルビスコ量の減少は、老化促進に伴う窒素の再転流の結果と考えられ、根の温度が低い場合に高CO_2による葉の老化が促進されることが示された。根の活性の指標である窒素の吸収速度は、高CO_2で外気CO_2に比べ、高温、中温条件では高まるが、低温条件では抑制され、ルビスコ量の応答と一致した。一方、葉のヘキソース量は高CO_2により増加するが、ルビスコ量の応答と一致しなかった。また老化に関わる植物ホルモンのアブシジン酸の葉における濃度は高CO_2による一定した傾向がみられなかった。 以上、高CO_2による葉の老化促進は、葉への糖の蓄積やアブシジン酸の増加よりも、葉での窒素の需給バランスを介し、根の窒素吸収の活性が関わる可能性を示した。次年度以降は、根域温度による応答が単純に窒素の収支で決まるものなのか、その変化にともなう何らかのシグナル伝達が作用しているのか、詳細に検討する。
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