2005 Fiscal Year Annual Research Report
北条団水を中心とする浮世草子の研究、及び浮世草子出版メディアに関する研究
Project/Area Number |
05J03045
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
水谷 隆之 青山学院大学, 文学部, 特別研究員(SPD)
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Keywords | 近世文学 / 浮世草子 / 北条団水 / 出版 / 俳諧 / 西鶴 |
Research Abstract |
今年度は、特に貞享・元禄期における団水の動向およびその作品についての調査・分析を行うとともに、当該期に西鶴や団水が係わった出版書肆や俳人の動向を追い、基礎研究の拡充を目指した。うち、団水の俳諧観および京の出版書肆との関係を、論文「元禄初期の団水と西鶴-『特牛』を中心に-」によって示した。具体的には、1、団水が西鶴の俳諧観に沿いつつ宗因風を発展的に継承しようとしていることを確認した。従来いわれているように、『特牛』(団水著)には『俳諧石車』(西鶴著)と相違する所論が散見するが、それが両者の俳諧観の懸隔を示すものではないことを、本文内容および成立背景についての精査を通じて検証した。また、団水が惟中の俳論書を批判的に摂取していることを、その旧著『俳諧未曾有』によって把握し、西鶴が連歌風俳諧に沿いつつも宗因風を堅持したこととの共通性について論じた。2、前年度の研究成果である『好色破邪顕正』の作者認定と併せ、西鶴本への京書肆の参入が団水の協力のもとに成ったことを指摘した。これは、『石車』執筆を機に、西鶴が貞享以来休止していた俳諧活動を再開するに至る背景を窺わせるものである。なお、この見解にもとづき、団水作とされる『色道大鼓』の成立背景についても現在検討中である。 以上は、一連の調査によって得られた資料や知見を統括的に提示していくための基礎となるものである。成果の公表に際してはなお慎重な検討を要するものが少なくないが、うち、西鶴晩年の俳諧復帰と浮世草子の作風変化との連動性を指摘する論文を、上記1にもとづき「西鶴の俳諧と浮世草子」と題して現在執筆中である。
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Research Products
(1 results)