2006 Fiscal Year Annual Research Report
北条団水を中心とする浮世草子の研究、及び浮世草子出版メディアに関する研究
Project/Area Number |
05J03045
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
水谷 隆之 青山学院大学, 文学部, 特別研究員(SPD)
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Keywords | 近世文学 / 浮世草子 / 北条団水 / 出版 / 俳諧 / 井原西鶴 |
Research Abstract |
元禄期における団水と西鶴の、特に俳譜・出版面における協力関係について指摘した前年度の研究成果およびこれまでの調査結果をふまえ、今年度は、西鶴晩年の俳譜と浮世草子について検討し、「西鶴晩年の俳譜と浮世草子」(『東京大学国文学論集』2号、2007年5月刊行予定)として論文化した。元禄期における西鶴晩年の俳壇復帰については、従来、元禄新風俳譜への妥協という消極的な見方が多くなされてきたが、本稿では、俳言の背景に当世風俗を常にみつめ、それを付合の主軸としてきた西鶴俳譜の方向性は、<心付>を中心とする元禄疎句俳譜に必ずしも相違するものではなく、特に晩年の西鶴は、そうした元禄俳諧をむしろ積極的に受け入れ、自らの俳言主義をより徹底して実践する場としていることについて論じた。また、俳譜における西鶴のこうした動きは、晩年の浮世草子における<世の人心>への関心の強まりと軌を一にするものであると捉え、当時の西鶴の俳譜と浮世草子に共通の発想がみられることについて具体的に示した。 また、上述のような観点のもと、「西鶴「好色物」の女人像」(『国文学解釈と鑑賞』71巻12号、2006年12月)においては、西鶴作浮世草子の「好色物」浮世草子に描かれた女性像の特徴について分析し、西鶴がさまざまな<人の心>を誇張し強調しつつ、多様に描き出していることについて論じた。 なお、元禄当時の団水は、こうした西鶴の姿勢に同調して俳譜・浮世草子の創作を行っていたものと考えられる。西鶴と団水の作品を同時に視野にいれ、それぞれを相対化しつつ、その作品分析を継続して行った。
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Research Products
(3 results)