2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J03063
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
黒岩 壮吾 青山学院大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 超伝導 / 結晶構造 / μSR測定 / 超伝導対称性 / 長周期構造 / ケイ素化合物 |
Research Abstract |
MgB_2型超伝導体CaAlSiはT_c=8Kを有しAlB_2型に属する事は既に周知されているが、近年、放射光X線・中性子回折を相補的に併用した詳細な結晶構造がSagayama等によって報告されている。その報告によるとCaAlSiは面内のAlとSi原子の歪み・回転に起因したc軸方向への5倍(5H-CaAlSi)・6倍(6H-CaAlSi)の長周期構造を有し、かつT_cもその周期に依存することが知られている。 そのような中、我々が育成した単結晶試料はc軸方向に長周期構造を持たずab面内でAlとSi原子が完全に秩序化した状態(1H-CaAlSi)にあることが判明した。興味深い事にこの新たに発見した1H-CaAlSiの磁気応答は各結晶軸に対しておよそ等方的であり、また比熱測定から見積もったギャップサイズやμSR測定から得られている超伝導秩序変数の構造等、各種物性が長周期構造を有する場合とは劇的に異なる事を明らかにしている。故に本系における結晶構造(空間反転対称性・次元性など)と超伝導特性の間には密接な相関関係があると考えられる。 本研究の対象物質であるCaAlSiのように、ある一つの物質において様々な構造が安定状態に存在し、電子・磁気基底状態の次元性や物性も極端に異なるということは特に稀な事象である。また我々の研究成果からは、物性を特徴づけるパラメータとして近年周知されている「電荷」・「スピン」・「軌道」という要素の他に「構造」という最も基礎的なパラメータの重要性を再認識する結果であると言える。今後としては各相に対する結晶構造と超伝導特性の起源を明らかにするために、原子レベルで電子状態・ギャップ構造等を直接観測可能である核磁気共鳴法(NMR)・走査トンネル顕微鏡(STM)・角度分解光電子分光測定(ARPES)、そしてより詳細なμSR測定等を予定している。
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Research Products
(3 results)