2006 Fiscal Year Annual Research Report
スピン構造制御を目指した新規フェナレニル基盤開殻有機分子の設計・合成と物性測定
Project/Area Number |
05J03391
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
西田 辰介 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 有機合成 / フェナレニル / 非局在 / 量子コンピュータ / 安定開殻分子 / 分子スピンバス |
Research Abstract |
フェナレニルを基盤とした安定中性ラジカルである6-オキフェナレノキシルに、電子ドナー分子であるテトラチアフルバレン(TTF)を導入した分子は、溶媒環境・温度変化による容易な分子内電子移動により、スピン中心移動やソルバト/サーモクロミズム現象を示すことをこれまでに報告した(Anrew.Chem.Int.Ed. 2005,44,7277)。これらの現象は電気化学的挙動とも強い相関をもっており、すでに溶媒環境の変化との相関については明らかにした。昨年度は新たに低温用の電気化学測定セルを開発して、温度との相関も明らかにすることに成功した(第87回日本化学会春季年会、口頭発表)。 第2の重要研究課題として、分子スピン量子コンピュータの実現に向けたキュービットラジカルの合成研究も引き続き行ってきた。昨年度は、分子内に核スピンクライアントキュービットを多数準備するために、ジフェニルニトロキシドの窒素原子を同位体標識(^<15>N)し、フェニル基の位置選択的フッ素化または重水素化を行った新規誘導体を合成した。フッ素置換体の一つは、溶液状態でのESR/^1H-ENDOR測定から予想を超える大きな超微細結合定数や非対称性効果を示した。そこで、基底状態における量子化学計箪を基にして実験値を再現したところ、フッ素核による大きな電子的効果を見出すことができた。さらに、溶液状態でのスピン緩和時間の測定を行い、等方性溶液状態での量子スピンバスコンピュータの初歩的な演算を可能にする長いデコーヒレンス時間を持つ系の探索、そして量子スピンコンピュータ演算のためのパルスENDOR実験が進行している。磁気的に透明な固相系での^1H-、^<15>N-ENDORスペクトル測定は、結晶面の全面解析が進行しており、量子スピンバス量子コンピュータ/量子情報処理の初歩的演算、三体スピンの擬量子エンタングルド状態の形成に関する初の実験などに成功した。
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Research Products
(3 results)