2005 Fiscal Year Annual Research Report
スピン構造制御を目指した新規フェナレニル基盤開殻有機分子の設計・合成と物性測定
Project/Area Number |
05J03391
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
西田 辰介 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 有機合成 / フェナレニル / 非局在 / 量子コンピュータ / 安定開殻分子 / 分子スピンバス |
Research Abstract |
本研究では、安定開殻有機分子のスピンを用いた量子コンピュータや有機磁性物質の開発、また高いレドックス性を基盤とした二次電池の開発を目的として、フェナレニル骨格を基盤とした新規安定中性ラジカルである6-オキソフェナレノキシルの合成とその性質について以下に示す研究を行った。 量子スピン(電子及び核スピン)の量子絡み合い状態を実現できる分子(分子スピンバス)を目的として、安定なジフェニルニトロキシドラジカルに着目し、同位体標識を行った誘導体の新規合成経路の開発研究を行った。その結果、重水素置換体や窒素15標識体および任意の位置にフッ素原子を置換した誘導体の効率的な合成法の開発に成功した。また、6-オキソフェナレノキシルに電子ドナーであるテトラチアフルバレン(TTF)を導入した分子を合成した。この分子は、6-オキソフェナレノキシルの持つクロラニル並の電子アクセプターにより分子内で容易に電子移動が起こることを見出した。そして、電子移動の前後でミクロなスピン構造や巨視的な色の顕著な変化が、溶媒や温度の変化により制御できることを明らかにした。 電極活性物質には従来無機化合物が多く用いられていたが、近年高いレドックス性を有する有機中性ラジカルを用いたものが研究されている。有機ラジカル電池は、短時間での充電と長い充放電サイクルが可能なことが大きな特徴である。電極活性物質として用いられた安定ラジカルは、高分子鎖を有するニトロキシドラジカル誘導体が大部分を占めていた。今回、6-オキソフェナレノキシル誘導体を電極活性物質として用いて二次電池としての性質を示すことを見出した。これは、低分子量の結晶性ラジカルとして初めての例である。
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Research Products
(4 results)