2007 Fiscal Year Annual Research Report
スピン構造制御を目指した新規フェナレニル基盤開殻有機分子の設計・合成と物性測定
Project/Area Number |
05J03391
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
西田 辰介 Osaka City University, 大学院・理学研究科, 特別研究員PD
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Keywords | 有機合成 / フェナレニル / スピン非局在性 / 量子コンピューター / 安定開殻分子 / 分子スピンバス / ジフェニルニトロキシド / 二次電池 |
Research Abstract |
分子スピン量子コンピュータの開発に向けて、これまでにジフェニルニトロキシドラジカル(DPNO)のフェニル基の水素原子を位置選択的にフッ素原子や重水素原子に置換した誘導体を設計・合成した。溶液状態でのESR/^1H-ENDOR測定および量子化学計算から、フッ素核による大きな電子的効果を見出し、さらに量子スピンバス量子コンピュータ/量子情報処理の初歩的演算、分子性電子スピンを含む三体スピンの擬量子エンタングルド状態の形成に関する初の実験に成功した。昨年度は、電子スピン-電子スピン制御を目指し、DPNOを基盤とした新たなジラジカルの設計・合成に着手した。この分子は、過去に設計・合成されてきたジラジカルとは根本的に異なる設計指針に基づいており、分子スピン量子コンピュータへの利用だけに留まらず、分子スピン系の新しい応用展開のプロトタイプとなるものである。 フェナレニルを基盤とした6-オキソフェナレノキシル安定中性ラジカル(6OP)およびそのπ拡張体を正極活物質として用いた新しい二次電池(分子結晶性二次電池)を開発した。測定の結果、分子の多段階レドックス性を反映した段階的な充放電挙動を示し、一分子当たりの収容電子数の向上による高い放電容量を示した。この結果は、新たなエネルギー材料を開発する上で重要な設計指針を与えるものである。 また、6OPは、二段階レドックスにより電子スピン密度のトポロジー的対称性が反転する。従って、2個の6OPを結合したジラジカルは、中性状態と四電子還元状態では顕著に異なる電子スピン間相互作用を示すことをESRや量子化学計算から明らかにした。この性質は電子移動のみによって誘因されることから新たな磁気スイッチング機構として興味深く、また分子結晶性二次電池への展開にとっても有用な性質であると言える。
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Research Products
(53 results)