2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J03403
|
Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
植田 麦 大阪市立大学, 大学院・文学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 古事記 / 日本書紀 / 物語論 / 時間表現 / 空間表現 |
Research Abstract |
特別研究員初年となる平成17年度は、研究計画に従い、古事記と日本書紀とにおける時間表現を中心として、その物語論的研究の可能性の追求を行った。 古事記においては、過去を示す時間表現「古」「昔」は地の文・会話文ともにほとんど存せず、それに対して「今」は地の文・会話文の双方において頻出する。この「今」のうち、会話文におけるそれは登場人物の認識の範疇であり、対して地の文におけるそれは語りに依拠するもの、というよりはむしろ、語りそのものとして把握が可能である。そうした認識にたった上で、地の文における「今」に関わる表現のうち、時点の提示用法である「於今」と、時間の連続を示す用法である「至今」との相異および類同について発表を行い(古事記学会全国大会、「古事記における「至今」型書式とその機能-「今あること」との対比を中心に-」)、またそれをもとにして論文を発表した(「古事記における「至今」型書式とその機能」『古事記年報』48)。 かくのごとき古事記の語りの在りように対し、日本書紀では「今」と「古」「昔」とが併用される。しかもそれは、時間的相対のみならず空間的な相対をも含んだものとしての把握が可能であった。すなわち、自律的な物語世界である「古」「昔」に向き合うものとして語りの世界である「今」が、日本書紀に内在しているのである。このような状況の確認として研究発表(東アジア日本語教育・日本文化研究学会国際学術大会、「日本書紀の「今」と「古」」)を行い、また「今」を研究の中心にした論文(「日本書紀の「今」-相対化される時空-」『上代文学』96)を発表した。
|
Research Products
(2 results)