2005 Fiscal Year Annual Research Report
新奇な超分子化学的結晶設計による純有機フェリ磁性系の構築
Project/Area Number |
05J03421
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
神崎 祐貴 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 分子磁性 / スピン化学 / フェリ磁性 / 量子スピン / ラジカル / ニトロニルニトロキシド / ESR / 磁気物性 |
Research Abstract |
超分子化学的アプローチによるクラウンエーテル錯体の合成と磁気的性質 本研究グループでは以前,基底1重項ビラジカルとモノラジカルの反強磁性的な交互1次元鎖が,広義のフェリ磁性的基底状態と非磁性基底状態を取りえることを理論計算から提案している.1次元鎖がフェリ磁性的基底状態を取るか,非磁性基底状態を取るかは,ビラジカル分子内とビラジカル-モノラジカル間(分子間)の相互作用の大小関係に強く依存する.この全く新しい磁性概念を我々は「一般化フェリ磁性理論」と呼んでいる. 一般化フェリ磁性理論を実験的に検証するために,スピン量子数の異なる開殻分子に電荷を与えて,クーロン力を利用して分子配列を制御しようとする"超分子化学的アプローチ"を提案した.クラウンエーテル誘導体を合成し,ESRスペクトルと磁化率の解析から,電荷導入型の超分子アプローチの構成分子になることを示した.さらに,基底1重項(S=0)の荷電ビラジカルを用いることにより,三元系錯体化合物(フェノレート置換ビラジカル-クラウンエーテル置換モノラジカル-アルカリ金属)を超分子化学的アプローチに基づいて合成した.磁化率の解析から,この錯体が,全く新しい磁性概念である"一般化フェリ磁性理論"を部分的に実証する非磁性基底状態をとることを明らかにした.本研究で,多成分系の開殻有機分子の分子結晶について,分子の電子状態(スピン状態)の制御を含む結晶工学的方法により,結晶構造・分子配列を部分的に制御し,有機フェリ磁性をはじめ,分子由来の特異な磁気挙動を発現させる方法論を示した.また本研究の成果は,分子磁性の分野のみならず,広く「他成分系有機物質の結晶設計」に対して波及効果をもたらした.
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