2005 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属錯体を用いた一般化フェリ磁性系の構築と量子磁気スイッチング
Project/Area Number |
05J03446
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
前川 健典 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 分子磁性 / スピン化学 / フェリ磁性 / 量子スピン / ラジカル / ニトロニルニトロキシド / ESR / 磁気物性 |
Research Abstract |
1.基底一重項ビラジカル-モノラジカル強磁性交互一次元鎖における基底スピン状態 「一般化フェリ磁性」は、ビラジカル-モノラジカル間の交換相互作用が反強磁性的である場合でのみ理論考察がなされたものである。しかし、現実の分子系では強磁性的な相互作用を有する可能性もあり、そのような系においても基底スピン状態の理論的考察が必要である。この問題に関してハイゼンベルグモデルを用いた理論計算を行った。理論モデルとしては、ビラジカル-モノラジカル間の相互作用のトポロジーが異なる二種のモデルを対象とした。双方のモデルにおいて、相互作用の比に依存した二種の基底状態を取りうることを明らかにした。一つは低スピン状態であり、もう一方は高スピン状態である。高スピン状態においては、孤立した状態ではスピン量子数S=0であったビラジカルがS=1が良い量子数となることを見出した。以上の理論的考察から、反強磁性交互鎖のみならず強磁性交互鎖においても広義のフェリ磁性スピン整列(一般化フェリ磁性)が実現しうることを明らかにした。 2.一般化フェリ磁性孤立モデル系としてのbnn-Ni(hfac)_2錯体 本研究の主目的の一つである"一般化フェリ磁性モデル分子系の構築"に対して、[(bnn)(Ni(hfac)_2)_<1.5>(H_2O)]錯体を設計・合成した。X線結晶構造解析により、結晶固体中において基底一重項ビラジカルbnnがNi(II)イオンにキレート配位した3スピン系が内在していることを明らかにした。この三角錯体部は、一般化フェリ磁性における孤立モデル系とみなすことができる。SQUID磁束計による磁化率測定から、基底一重項ビラジカルがこの錯体中ではS=1のスピン状態をとっていることを見出した。以上の結果は、一般化フェリ磁性を部分的に実証するものである。
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