2006 Fiscal Year Annual Research Report
表現主志運動において文学キャバレーが果たした役割とその歴史的意義を明らかにする
Project/Area Number |
05J03544
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
西岡 あかね 岡山大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 表現主義 / アヴァンギャルド芸術 / パフォーマンス・アート / 文学キャバレー / ドイツ / ゲオルク・ハイム / フランツ・ヴェルフェル |
Research Abstract |
今年度はまず、前年度に引き続き、ドイツでの資料収集・調査を行った。当初の計画では、この調査のため、2006年10月までドイツに滞在予定であったが、資料収集が順調に進んだため、この計画を変更し、2006年5月より岡山大学で研究に従事した。 帰国後はまず、ドイツで収集した膨大な文書館資料を整理、分析し、あわせて、先行研究文献での議論をも踏まえつつ、主な未発表資料の評価を行った。その過程で新たな論文の構想を練り、ゲオルク・ハイムを例として、「表現主義の芸術実践における、芸術家の自己演出」というテーマで論文を執筆した。この論文は、ゲオルク・ハイムの日記、手紙等における自己記述と、同時代人の回想を主な資料として、この初期表現主義の詩人が、表現主義のサブカルチャー的芸術実践の中で、いかに前衛芸術家としての自己を示威、演出しようと試みたかを論じた。その際、表現主義の芸術家の自己演出を、ダダや未来派の芸術家のそれとも比較した。この論文に関しては、現在、雑誌発表を計画中である。 この論文を執筆後、新たに表現主義の朗読理論とヴァリエテ批評に関する研究を始め、その研究の端緒を、2006年10月に行われた、日本独文学会秋季発表会で発表した。今後、この発表原稿を大幅に加筆、修正する形で、「表現主義のパフォーマンス性」に関する論文を執筆する予定である。さて、この研究を進めてゆく過程で、これまであまり注目していなかった表現主義作家、フランツ・ヴェルフェルの重要性が明らかになった。そこで、2006年の11月下旬より、彼の遺稿を調査する目的で、アメリカでの調査・研究を行った。アメリカでは主に、カリフォリニア大学ロサンジェルス校に保管されている資料の調査を行ったが、この調査の補足として、ペンシルヴァニア大学のヴェルフェル文庫でも資料を収集した。帰国後は、この調査の過程で発見した資料も織り込みながら、前述の論文を完成させたい。また、ヴエルフェルのパフォーマンス的芸術理論については、来年度、国際学会において発表することを予定している。
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