2005 Fiscal Year Annual Research Report
粒子と量子場の相互作用系における束縛の強化の解析的研究
Project/Area Number |
05J03551
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
宮尾 忠宏 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 場の量子論 / パウリ・フィールツ モデル / 基底状態 |
Research Abstract |
量子力学的粒子と量子場の相互作用系はPauli-FierzハミルトニアンHで記述される.このハミルトニアンは全運動量作用素と可換であるため、Hは全運動量Pに関してファイバー直積分で表示される.この直積分表示における固定された全運動量PでのハミルトニアンをH(P)と書くことにする.このとき、次の問いを考える: (Q.1)作用素H(P)は自己共役性か. (Q.2)H(P)は基底状態を持つか. 量子力学の公理により、量子力学的物理量は自己共役であることが要請される.従って、(Q.1)はH(P)を解析する際にまず証明しておかなくてはならないことである.また、基底状態はエネルギーが最も低い、時間発展に対して不変な状態であるから、その存在を示すことは数学的にも物理的にも興味のあることである. 筆者はH.Spohn教授及びM.Loss教授との共同研究を通じて以下の結果を得た. (A.1)H(P)の自己共役性の証明.H(P)はPの他にもいくつかのパラメーターを持つが、自己共役性はそれらに依存せずに成り立つ.また、H(P)の定義域も同時に特定した.この定義域もパラメーターには依存しないことを示した.これらの結果により(Q.2)の解析が多分に容易になった. (A.2)H(P)が基底状態を持つPの範囲を特定した.大雑把に述べると、この範囲は束縛エネルギーと呼ばれる量に依存する.物理的にはPが大きいとき、つまり量子力学的粒子が非常に高速な場合にはチェレンコフ光を放射することが知られている.これは高速な粒子はもはや安定でない、つまり基底状態を持たないことを示唆している.H(P)の基底状態の存在定理にPの制限が付くのはこのように物理的に自然であると考えられる.
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