2006 Fiscal Year Annual Research Report
地球外有機分子の多次元同位体組成解析による化学進化メカニズムの解明
Project/Area Number |
05J03562
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
大場 康弘 岡山大学, 大学院自然科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 地球外有機化合物 / 化学進化 / 炭素質隕石 / 高分子状有機物 / 低分子モノカルボン酸 / 紫外線 / 同位体化 / 同位体分別 |
Research Abstract |
低分子有機化合物(酢酸、プロピオン酸、メタノール、アセトニトリル、ベンゼン、アセトン)に高圧水銀ランプから発せられる紫外線を照射し、その分解に伴う炭素・水素同位体分別を明らかにした。各化合物は紫外線照射時間とともに分解が進み、アセトンが最も早く分解した。また、酢酸とプロピオン酸もアセトンについで分解が早かった。これら3種類の化合物はその構造に炭素-酸素二重結合(カルボニル基)をもつことから、カルボニル基は本研究で用いた紫外線をより効率よく吸収することが示された。各化合物の半減期は17から550分であった。 各化合物は分解とともに炭素・水素同位体比ともに大きくなった。炭素同位体分別係数は0.9968から0.9875、水素同位体分別係数は0.9890から0.9406であった。分解速度の順序と炭素・水素同位体分別係数の大きさの順序には相関は見られず、化学的に安定な化合物が同位体的に安定であるというわけではないことが明らかになった。 分解に伴う同位体分別の大きさの順序が炭素、水素でまったく異なった。これは同位体分別のメカニズムが炭素と水素でまったく異なることを示唆する。例えば水素同位体分別の場合は、水素ラジカルなどの化学的に活性種が紫外線照射により生成し、それが化合物と反応することで分解・同位体比変化が起こるというメカニズムが想定されるが、炭素同位体分別の場合には考えにくい。したがって、分解のされやすさだけでなく、化学的に活性な分子種の種類や量にも同位体比変化は依存している可能性がある。 このように有機化合物の紫外線分解は、宇宙空間や地球大気中など紫外線に富む環境では有機化合物の同位体組成に影響を及ぼすひとつの要因となりうることが示された。
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