2005 Fiscal Year Annual Research Report
地球外有機分子の多次元同位体組成解析による化学進化メカニズムの解明
Project/Area Number |
05J03562
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
大場 康弘 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 炭素質隕石 / 低分子モノカルボン酸 / 炭素・水素同位体比 |
Research Abstract |
1 マーチソン隕石高分子状有機物約7mgを水とともに270、300、および330℃で72時間加熱した後、それぞれ0.13-0.48mmol/gの酢酸が検出された 酢酸の炭素同位体比(δ^<13>C)は-20.8--27.0‰であった。また酢酸のメチル基はカルボキシル基よりもδ^<13>Cが小さかった。水素同位体比は各温度で大きな変化は見られなかった(約-160‰)。 マーチソン隕石中酢酸のδ^<13>Cは非常に大きく(+22.7‰)、隕石が母天体上で経験した温度が本実験で用いた温度より低い(<25℃)ことから、マーチソン隕石中酢酸は隕石母天体上での高分子状有機物由来とは考えにくい。しかし、高分子状有機物の熱水反応による酢酸の生成が起こるという事実は注目すべきである。 2 3種の南極産炭素質隕石(A-881280,A-881334,A-881458)を水抽出し、炭素数4までの低分子カルボン酸を得た。存在量はそれぞれ酢酸が最も多く、最大で1.97μmol/g含まれていた(A-881458)。 酢酸のδ^<13>Cは-34.7--25.6‰であり、隕石間で9.1‰の差がみられた。本研究結果は、異なる環境(隕石)間における酢酸の生成および変成過程の違いを反映していると考えられる。 3 約20μmolの酢酸標準試薬を水0.5mlとともに、250および300℃で加熱し、メチル基およびカルボキシル基のδ^<13>C変化を調べた。250℃での加熱では10日間加熱してもδ^<13>Cは変化しなかったが、300℃で5日間加熱すると、カルボキシル基のδ^<13>Cが1.2‰大きくなった。このことはメチル基とカルボキシル基の炭素が交換したことを示す。本研究結果は、隕石中酢酸の同位体組成が生成当時とは異なり、様々な二次反応(隕石母天体上での熱水反応など)により変化した可能性を示唆するものであった。
|