Research Abstract |
マイクロ・ナノチャネル内における気体の熱流動は,固体表面や界面での気体分子の反射状態に直接影響されることから,チャネル内熱流動特性の正確な把握には,各々の分子の種類に応じた気体と固体の分子干渉を含む分子論的な流体解析が必要である.そこで,本研究では,固体表面の性状や気体の種類により,固体表面における気体分子の適応係数,気体分子反射特性,固体に働く応力,表面に伝わる熱流がどのように変わり,また,それに伴う熱流動特性への影響を明らかにすることを目的とし,気体の運動解析に対してはDSMC法を,気体-固体分子干渉には分子動力学法を用いて調べた.固体表面として白金,気体分子として単原子分子のアルゴン,および,二原子分子の窒素を取り,表面性状としては,清浄な場合と表面に異分子(キセノンあるいは水分子)が物理吸着している場合を取り扱っている.クヌーセン数が0.2と1.0における二平板間のクエット流れと上下平板間に温度差のある問題を解析し,次のような結果を得た.窒素分子に対するエネルギー適応係数の値が対応する実験値とその傾向がよく一致しており,また,並進エネルギー適応係数が回転エネルギー適応係数よりも大きくなるという実験的結果と同様の傾向が見られた.また,壁において反射される気体分子のもつ分子速度分布関数,および,回転エネルギー分布関数について調べたところ,壁面にふさわしい適応係数を取るときにマックスウェル型の反射境界条件によって記述されることが示された.さらに,アルゴン気体と水分子吸着白金表面との接線方向適応係数を求め,吸着分子数の適応係数に及ぼす影響を定量的に明らかにした.とくに清浄な表面に比べて吸着分子表面の熱流動への影響が大きいことを確認した.さらにまた非経験的分子間ポテンシャルを構築し,同様の解析に拡張できるよう進めている.
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