2005 Fiscal Year Annual Research Report
核酸の構造安定性に及ぼすモレキュラークラウディング効果の熱力学的定量化
Project/Area Number |
05J03648
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
狩俣 寿枝 甲南大学, 自然科学研究科, 特別研究員DC1
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Keywords | 核酸構造的安定性 / モレキュラークラウディング / 水和 / DNA四重鎖 / リボザイム / pHセンサー |
Research Abstract |
本研究は、細胞内の核酸構造の解明や遺伝子発現制御機構の解明を目指してモレキュラークラウディング環境(細胞の非常に混み合った環境)下での核酸の構造や安定性に及ぼす相互作用をエネルギーレベルで定量的に解析し、データベース化している。さらに、この定量的なデータは核酸を新たな材料として利用する際の分子設計にも有用であると考えられる。 細胞の老化や癌化に重要なテロメア領域の配列のDNA鎖に及ぼすクラウディング効果について検討した結果、テロメア領域の配列は二重鎖を形成するよりも四重鎖を形成する方がはるかに安定であることが明らかとなった。さらに、定量的なパラメータから、クラウディング環境下では核酸の高次構造形成に必要な水分子の数が少ないほど安定であることわかった(Nucleic Acids Res.Symp.Ser.,2005,49,239)。この知見をもとに、アンチパラレル型DNA四重鎖にクラウディング分子を添加するとより水和水が少ないG-wire構造に構造遷移させることができた(Angew.Chem.Int.Ed,2005,44,3740)。また、リボザイムによる基質RNAの切断は溶液中のカチオン濃度やリボザイム-基質複合体の溶媒和状態によって大きく変化することが知られている。そこで、クラウディング環境下でリボザイムによる基質RNAの切断反応を行うと、1mM Mg^<2+>存在下で速度定数を希薄溶液の10000倍まで増大できることが明らかとなった(特願、2006-041055)。さらに、このデータベースを用いて溶液のpHによってアンチパラレル型二重鎖からパラレル型二重鎖に構造遷移するDNA鎖を設計し、構造遷移したDNA二重鎖の割合によって溶液のpHをセンシングできる手法を開発できた(Biochemistry,2005,44,7125)。
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Research Products
(4 results)